Shinji Nakano / まとめ:autosport web

 コーナーに入るとき、ドライバーはブレーキングでフロントに荷重移動をしてステアリングを切りますが、ドライバーによってステアリング、腰、肩、どこで荷重移動を感じ取るかが違うと思いますけれど、大半のドライバーがコーナリングでの進入からフロントタイヤのグリップを頼りにしてドライビングをすると思います。

 カートは車体が軽くてサスペンションがないので荷重移動の時間も少なく、フレームの剛性と特にフロントとリヤのタイヤの外側のエッジ部分を使ってコーナリングをするのですが、車重が重い四輪マシン、F1マシンでそれをやるのはすごく難しいんです。

 フロントのグリップはもちろん重要ですが、それだけではなくリヤタイヤの限界を早く上手に見極められる、そして感じられるドライバーというのが、カートのように運転ができるドライバーだと僕は感じます。これはフェルスタッペンもそうです。彼らは重いマシンで、クルマの荷重移動を絶妙に感じながらコーナリングでタイヤのエッジ部分のグリップまでを使いこなしています。

 カートと違って四輪はマシンが重たいですし、サスペンションの動きもあるので、タイヤのエッジ部分を感じてグリップを使い切るのが難しい。コーナーの出口に向けて、リヤに早く荷重をかけてあげるというのも非常に難しいです。わずかなタイミングのズレで失敗して、スピンなり飛び出したりもしてしまいます。そういった走り方はカートではできていても、四輪ではその感覚的な部分が格段に難易度が上がるわけです。

 それでも、その走りが続けられれば雨の路面や、少し濡れた路面でもクルマを速く走らせることにつながり、さらに、ピーキーなクルマを操れる、ということもできるようになります。

 難しい話や質問はそのあたりにしまして(苦笑)、決勝レースはレコノサンスラップでフェルスタッペンがクラッシュしたことが、まずはビックリでした。『フェルスタッペンでもああいうミスをするんだ』という……それだけ、あの半乾きの路面でF1マシンをドライブするのは難しいことだと感じましたし、路面ミューが低い状態でコントロールするのはとても難しいタイヤなんだというのは見ていて思いました。でも、凄かったのはやはりその後のグリッド上でのマシンの修復でしたよね。

 これはF1だけではないですが、改めてレースのメカニックたちの凄さを感じました。いや、早かったですね。スタートに間に合わせるのは絶対に無理だと思ったんですけれどね(笑)。

 クラッシュした部分、直す場所の運もあったと思いますが、レッドブルのメカニックたちはきっちりとマシンを修復させました。ドライバーだけではなく、普段は表に出てこないメカニックたちも含めて、チーム力でレースを戦っているんだということが証明されましたよね。

 そして、クラッシュしたマシンから降りて、グリッドで待機するフェルスタッペンの普段とあまり変わらない振る舞いもさすがでした。普通のドライバー心理としては、ああいったことをしてしまうと『やっちまった!』という思いで、その場から逃げ出したくなると思います(笑)。

 ですが、ああいったフェルスタッペンのふてぶてしさといいますか、逆にその表情を見せないというのも大事なことです。フェルスタッペンも心中は穏やかではなかったと思いますし、あれでスタートできなかったらドライバーの大きなミスとして、とんでもない責任になって終わってしまいます。そういった意味で『外側から見られている』というのを感じ取って、普段と同じように振る舞えるところがフェルスタッペンの強さでもあるんでしょうね。

 そこからのスタートですが、やはりメルセデスはクルマ的に1段階上にいる、完全に別カテゴリーのクルマようです。今回はそれが顕著で、メカニカルグリップも含めたクルマそのものの速さが見て取れました。

 スタート前にアクシデントがありましたが、フェルスタッペンも離されながらも2番手まで上がって追いかけていって、あの半乾きの難しい路面で大きなミスなく、きちんとマシンをコントロールしているドライビングはやっぱりさすがだなと、いろいろな意味で思いました。

 おそらくサスペンションも完全に修復したわけではないでしょうし、アライメントもどこまで直っているかわからないですけれど、そのなかでも自分の仕事をきっちりとこなしました。スタートしてからは2度目の失敗はしなかったですね。

■今後も大きな期待ができるピンク・メルセデスと、マグヌッセンの混乱での強さと図太さ

2020年F1第3戦ハンガリーGP セルジオ・ペレス(レーシングポイント)
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