Ayao Komatsu

 フォーメーションラップ後にピットストップを行うことについては、ペナルティを科されるかもしれないと一瞬考えましたが、本当にに科されるとは思っていませんでした。実際レース中には何のお咎めもなかったのですが、レースが終わってから数時間後にスチュワードから呼び出しを受けました。というのも、アルファタウリがスチュワードに僕らの無線交信が規則違反ではないかと指摘したからです。

 正式な抗議ではないのですが、彼らの指摘は、今回のウチの行動が『フォーメンションラップでは、クルマの問題についてしかドライバーと無線で話してはいけない。もし話した場合はピットインしなければいけない』という2017年に発行された規則に違反しているのではないかという内容でした。

 FIAに呼ばれて話をしに行ったところ、なんとスチュワードは「この規則を知らなかった」と。情けないですよね……。F1ではスポーティングレギュレーションという毎年正式に発効される規則に加え、テクニカルディレクティブ(TD)というFIAから出される様々な規則があります。この大半はレギュレーションに組み込まれておらず、このTDの意図・背景を理解していないと正しい判断はできないという何とも曖昧な面があります。

 今回のレーススチュワードには元F1ドライバーのデレック・ワーウィックがいたのですが、彼の説明も支離滅裂で、いくら話しても水掛け論にしかなりません。レース中、ドライバーは「他の誰とも話さずに自分だけでタイヤの判断をしなければいけない」なんて言ってましたし、挙句の果てには「もうこの(議論の)場に居たくない」とまで言いだす始末でした。ホントに世界選手権に関わっているという自覚も無ければ責任感もないのでしょうね。

 最終的にはペナルティを受けることになりましたが、レース後にはルノー時代の元同僚や、フェラーリ、マクラーレンの知り合いから「ピットインはいい判断だったね、よくやった!」と言われました。僕としては、こういうことをするのがレースであり、レースの“コア”の部分だと考えています。いろいろな情報を瞬時に整理して、自分たちの置かれた状況で最適と思われる判断を下す。決して単なるギャンブルではありません。

ケビン・マグヌッセン&ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第3戦ハンガリーGP ケビン・マグヌッセン&ロマン・グロージャン(ハース)

 僕たちは他のチームと同じことをしても、勝てないどころかポイントも獲れません。後から振り返っても、もしあのタイミングでタイヤ交換の指示を出せていなかったら、もうトラックサイドでのエンジニアを引退しようと思うくらいです。ペナルティには納得できませんが、後悔はしていません。それに、あの状況で入賞できたというのはとてもポジティブなことです。

 次戦はイギリスでの2連戦ですが、舞台となるシルバーストンは、昔は有名な高速サーキットでしたが、近年のF1では全開で走れるコーナーが増え、高速サーキットというよりは全開区間の多いよりスパ・フランコルシャンに近いようなサーキット特性になってきているので、ハンガリーよりもウチには厳しいと思います。そういう意味では、ハンガリーでのレースはウチにとってはより重要だったんです。

 シルバーストンではパワーユニット(PU)のパワー不足もより顕著になりますし、ドライコンディションの場合は、かなりダウンフォースを削ってでも抵抗を減らさないとタイムも出ないし、レースでも勝負ができません。もちろんダウンフォースを削るほど中低速コーナーが厳しくなってきますが、そこをどう対処するかですね。とにかく、今はひとつでも上のポジションを目指してベストを尽くします!

ロマン・グロージャン&小松礼雄エンジニア(ハース)
2020年F1第3戦ハンガリーGP ロマン・グロージャン&小松礼雄エンジニア(ハース)

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