あらためてこのプロトタイプに注目してみよう。P34の出発点は74年の8月で、そこから図面が完成するまで1年間を費やしたとされる。ケン・ティレル代表とガードナーは極秘にプロジェクトを進め、チームクルーには箝口令を敷き、ドライバーにさえも全容を明かさなかったという。
そうして年8月1日に図面が完成し、そこからわずか3週間に“突貫で”仕立てられた初号機がこのプロトタイプである。6輪コンセプトの有効性を見極めるという使命があったため前年車のティレル007をベースにホイールベースを延長して製作されたといい、そのためフロントウイングは実戦的な形状をしておらず燃料タンクも小さかった。

そして9月22日にはヒースローのホテルでプレス発表がなされた。リヤからベールが剥がされていき、フロントが露出した途端に会場から嘲笑が漏れたという、あの発表会だ。当時の写真を見ればハイインダクションポッドを除いて現存個体はまさにこれであり、ひと目見た時のちょっとした違和感にも納得がいく。実戦登場までの間に各所がブラッシュアップされ形状変更されており、我々がよく知る実際のレース車両とはあらゆる部分が異なっているからだ。

この個体には輝かしい参戦履歴もなければ公式セッションを走った記録さえない。しかしこれは“革命前夜”の姿を今に残す貴重な個体。チームがシャシーナンバー01を欠番にしているのも、きっとこの個体に敬意を払っているからなのだろう。かくして革命は成ったのだ。
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誌面では貴重なプロトタイプの個体の細部に迫る写真を大きく多数掲載しておりP34ファンは必見となっている。他にもコリン・チャップマンやゴードン・マーレイ、ジョン・バーナードに現レッドブルF1のエイドリアン・ニューウェイまで“革命を成した男たち”についても豊富な記事が掲載されておりF1ファン必読だ。
『レーシングオンNo.508 F1革命車たち特集』はP34をイメージした特製ローソックスの特別付録がついて、現在発売中だ。内容の詳細と購入は三栄のオンラインサイト(https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=11412)まで。
レーシングオンNo.508 F1革命車たち特集
オールカラー116P
価格:本体2164円+税
