直後の51周目にはサインツの左フロントタイヤもパンク。そして、ファイナルラップにはトップを独走していたハミルトンの左フロントタイヤもパンクする。タイヤを履き替えて2番手を走行していたフェルスタッペンに、レースエンジニアから無線が飛ぶ。
レッドブル・ホンダ:ハミルトンがパンクした。彼はいまターン9をスロー走行している。

まったく予期していなかったのか、フェルスタッペンは珍しく聞き返す。
フェルスタッペン:だれ? だれがスロー走行しているって言った?
レッドブル・ホンダ:ハミルトンだ。パンクしたタイヤで、いまターン12をスロー走行している
リラックスしていたフェルスタッペンが目を覚ました。
フェルスタッペン:僕たち、勝てるの?
レッドブル・ホンダ:うまくいけば……
しかし、ハミルトンはフェルスタッペンの5.856秒前でフィニッシュ。逆転優勝はならなかった。レース後、フェルスタッペンは最後にピットインしたことを後悔していないと冷静に答えていたが、チェッカーフラッグを受けた直後は、放送禁止用語を繰り返し使用して、少し荒れていた。
フェルスタッペン:マジかよ××××××頼むよ××××××あ゛ーーっ
レッドブル・ホンダ:彼(ハミルトン)はツイていただけ。彼はラッキーボーイ。それより、よくタイヤをマネージメントした。
その後、何度かレースエンジニアとクリスチャン・ホーナー代表からの無線で落ち着いたのか、パルクフェルメに戻ってくるころには、2位という現実を受け入れていた。
フェルスタッペン:まあ、今日の僕たちなら、2位でも満足しないとね。優勝を狙うのはそれからだ

パンクして2位から11位に転落し、ノーポイントに終わったボッタスも少し荒れていた。レース後、無線でハミルトンがパンクしたことが伝えられると、こう返事をした。
メルセデス:ルイスもファイナルラップのターン7たでパンクしたが、彼は優勝した
ボッタス:それはすごく幸運だったね××××××
終盤のパンクでそれまでの筋書きが大きく書き変えられた2020年のイギリスGP。次の70周年記念グランプリは1ランク軟らかいコンパウンドの組み合わせになる。どんなドラマが待っているのか。