これを横で聞いていたアビテブールにも意見が求められた。アビテブールは、「裁定には満足している」と言いつつも、100%納得しているようではなかった。
なぜなら今回の裁定に関しては、リステッド・パーツの変更がテクニカル・レギュレーションではなくスポーティング・レギュレーションに掲載されているため、スポーティング・レギュレーション違反となり、技術的にはレーシングポイントのブレーキダクトはレギュレーションに合致していると判断された格好となったからだ。
もしテクニカル・レギュレーション違反であれば、該当するレースで獲得したポイントは失う。最近では2018年のイタリアGPで、ハースのロマン・グロージャンが6位でフィニッシュしながら、レース後にルノーからの抗議を受け、失格となった。
したがって、テクニカル・レギュレーション違反だった場合、レーシングポイントは少なくとも抗議を受けた第2戦シュタイアーマルクGPからイギリスGPまでの3戦分のポイントをすべて剥奪され、かつこの70周年記念GPからレギュレーションに合致した仕様に変更しなければならかった。
しかし、スポーティング・レギュレーション違反となったために、今後のレースでもレーシングポイントは同じブレーキダクトを使用したとしても戒告のみで罰則は科されない。
アビテブールは言う。
「複雑な問題であることは認めるが、これは技術的な問題だと思う。そして、彼らが得た技術的なアドバンテージをシーズンを通して享受することは議論の余地があると思う」
「なぜなら、ブレーキダクトの開発には空力開発の20%の時間が費やされ、空力開発はATR(空力テスト削減)によって、かけられる時間が短くなっているんだから。ただ、裁定を来年まで待つことなく、迅速に下した関係者の努力に対しては敬意を払っている」
果たして、この論争は裁定が出たことで幕引きとなるのか。それとも、新たな論争へと発展するのだろうか。
