これを見てメルセデス勢も相次いでピットイン。一時は7秒以上に広がったハミルトンとの差は縮まったものの、まだ4秒以上あった。そこでチームはフェルスタッペンにレース後半へ向けての戦略を、こう説明する。
レッドブル・ホンダ:ハミルトンをアンダーカットするのはかなり難しいから、ボッタスに抜かれないようにしよう
しかし、この無線にフェルスタッペンがキレた。
フェルスタッペン:あのさあ、彼らのことはもういいよ。まずは自分たちのレースをやろうよ。もう、ルイスのことは考えなくていいよ。だって、ソフトタイヤでは彼らほどのペースがなかったのは明らかだったんだから。僕たちは自分たちのやるべきことをやろうよ。彼らだって、自分たちのレースをしているんだから
レッドブル・ホンダ:落ち着いていこう、マックス
その後、ボッタスがフェルスタッペンの背後1.5秒差まで迫ってくると、レッドブル・ホンダは41周目にフェルスタッペンをピットインさせ、再びミディアムを履かせた。
その後メルセデスはボッタスにフェルスタッペンのオーバーカットを狙わせたものの、うまくいかず、2度目のピットインではフェルスタッペンと異なるタイヤで最終スティントに臨んだ。結局それも功を奏さず、最後はフェルスタッペンを追うことを諦めて、ファステストラップ狙いに切り替えたため、最終的にフェルスタッペンは2位でフィニッシュした。

レース後の記者会見で、無線でチーム戦略を批判したことを次のように説明した。
「僕たちには、彼らがやっていることをコントロールする力はない。つまるところ、自分たちがやっていることしかコントロールできない。だったら、自分たちが可能な限り最速でチェッカーフラッグを受けられる戦略を実行したほうがいい」
しかし、スペインGPの舞台であるバルセロナ-カタロニア・サーキットはコース上でのオーバーテイクが非常に難しいサーキット。単独で走っていれば、最速でチェッカーフラッグを目指す戦略を採ってもいいが、カタロニア・サーキットで最も重要なことはトラック(コース上での)ポジションだ。
フェルスタッペンが2回目のピットストップを行う直前のボッタスとの差は1.6秒。ボッタスの2回目のピットアウト直後のラップタイムは、ピットストップ直前のフェルスタッペンより約1.2秒速かったから、アンダーカットされていてもおかしくなかった。
この日のレッドブル・ホンダの戦略を、メルセデスのトラックサイドエンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、次のように称賛した。
「中盤のスティントで、バルテリがフェルスタッペンのアンダーカットを狙える小さなウインドウ(チャンス)があった。しかし、それをレッドブルが素早くカバー(ピットイン)してきた。彼らがレース戦略に長けていること、決して我々に楽をさせてくれないことを痛感したよ」