──Q1敗退のガスリーですが、2回目のアタックではフィニッシュラインで「パワーがなくなった」と言っていました。確かに最終コーナーからコントロールラインまで約570mと長いので、途中でなくなったら確かに大変だったと思います。実際に、パワーはなくなったのでしょうか。
田辺TD:なくなったことは事実なのですが、ドライバーにしてみれば1秒にも2秒にも感じる時間だったと思います。実際には、1000分の数秒単位のロスだったんです。むしろ予選結果が表しているように、クルマ自体が全然乗れなくなってしまった。予選なのでデプロイも確かにギリギリまで使うわけで、それで(パワーユニット側との)バランスが崩れてしまった。クルマが変わって、それで乗り方も変えざるを得ず、バランスが崩れたということです。
──FP3から予選にかけてのセットアップ変更が、裏目に出たと思われる?
田辺TD:調査中ですが、チームに聞いてください。
ーガスリー自身は、そのためにコンマ数秒ロスしたと言っていますが、それは誇張だったのでしょうか。
田辺TD:そうですね。ドライバーが実際に感じる時間としては、非常に長かったと思いますが。違う言い方をすれば、そこまで攻めて使い切る設定にしていたところに、思わぬクルマの状態変化という外乱が入った。パワーユニット側としては、エネルギーを余らせて走ったら損するわけで、そこまで攻めた設定だっただけに、このわずかなロスは、致し方なかったかと思います。

ー(パワーユニットの)単一モードに関してですが、ムジェロのようなレースで抜きにくく、予選グリッドが重要なサーキットの場合、レースでの信頼性にある程度目をつぶっても、より予選に振ったモードにする考えはあるのでしょうか。レースでは抜かれにくいわけですから、ドライバーにはあまり回さないよう指示してエンジンを守るとか。
田辺TD:たとえばストレートエンドで早めにスロットルを戻して、エンジンに楽をさせることは可能です。しかしそれもバランス問題で、エンジンをより痛めつける設定にしたとして、予選でラップタイムに影響する配分までやったとすると、高回転でぶん回すのではなく、おそらく燃焼系のモード変更になると思うので、そちらへのダメージが大きい。そうするとレースでスロットルを戻して助かるかというと、あまり効果はない気はします。
ただ今後3基目のパワーユニットを入れてやりくりしていくなかで、どんなコース特性のサーキットでどこまで攻めていくか、どこで楽するか、総合的に考えていかないといけない。しかしドライバーはいつでも全開で行きたがりますから、ここは予選で攻めたから、レースは抑えて走ってくれと指示するような、そんな甘い設定はできないと思います。
──そうすると昨年のオーストリアGPでの初優勝の際に使ったような強力なエンジンモードは、もはや使えない。
田辺TD:あれは距離限定モードでしたから。それで6戦なり7戦走りきるのは、今の我々の実力では無理ですね。



