そこで疑問となるのが、ならばなぜフリー走行3回目で新品のミディアムを1セット使用したのか。考えられるのは、金曜日の夜にセットアップを大きく変更したため、土曜日の予選前にもう一度ミディアムでのロングランのデータを取りたかったのではないだろうか。
それを物語るのは、フリー走行3回目での走行プログラムだ。通常、予選前のフリー走行3回目では新品タイヤで一発のタイムを出す予選シミュレーションを優先して行い、残った時間でロングラン・メニューも消化する。しかし、フェルスタッペンもアルボンもコースインした後は、どちらのタイヤでもいきなり連続周回を始め、ピットインしないで走り続けていた。
そこまでは戦略ミスとまでは言えないが、引っかかるのは予選Q3でのアルボンのタイヤ戦略だ。Q2をソフトで通過したアルボンはレースではそのソフトを履いてスタートしなければならない。したがって、もし1ストップ作戦を敷くなら、ピットストップで履き替えるタイヤはミディアムかハードしかない。ハードはフリー走行3回目で使用した中古しかないため、できれば新品のミディアムをレース用に残しておきたいところだ。
ところが、レッドブル・ホンダはQ3の1回目アタックで虎の子の新品ミディアムを履かせてアタックに出した。その背景にはアルボンがQ1とQ2でソフトを2セットずつ使用し、Q3で使用できる新品のソフトが1セットしか残っていなかったことが考えられる。

しかしそういう場合は、そもそもQ3で2回アタックをあきらめるか、1回目のアタックはQ1かQ2で使用した中古のソフトを使用するのが定石だ。なぜなら、異なるコンパウンドで1回目のアタックを行うと、2回目はフィーリングの違いに戸惑うことが少なくないからだ。
実際、アルボンは「最後のソフトのアタックは、ミディアムとはパフォーマンスの出し方がまったく異なりドライビングスタイルを変える必要があったので、多少走りのリズムに影響があった」と満足なアタックができていなかった。
しかもレースで使用することになるミディアムが中古になったため、レースではピットストップ直後の新品タイヤのおいしい所を使えず、中団に埋もれたままとなった。逆に予選で5周走行していた分のつけが回り、想定以上に進んだ摩耗によって、46周目に2度目のピットストップを行わなければならなくなり、ポイント圏外へ脱落した。
もちろん、メルセデスと同じタイヤ戦略を採っていても、結果は同じだったかもしれない。しかし、今回レッドブル・ホンダが採ったタイヤ戦略は、少なくともポルトガルGPの週末において、正解ではなかったことは事実だ。


