今回のレースではルイス・ハミルトン(メルセデス)やセルジオ・ペレス(レーシングポイント)、ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)が1ストップで走り切りました。ケビンが最後まで1ストップで走り切ることが可能だったかどうかは自信を持って言えませんが、重要なのは、各々が置かれた状況でどういうリスクをとるかをちきちんと見極めるいうことです。
たとえば、ケビンが2回目のピットストップをする前に走っていたのは11番手。何か起これば入賞できる位置なので、その場合は正攻法で走ります。もしケビンがその状況で16番手(当時クビアトが走っていた位置)だったら、逆にギャンブルをして走り続け、セーフティカーが出動する可能性に賭けたでしょう。たとえ最後までいけると思っていなくても、途中でピットストップをしたらその時点で入賞するチャンスがなくなってしまうからです。
2位に入賞したペレスはチームメイトのランス・ストロールが新品のインターで苦しんでいたのを見て、ピットインせずに走りましたが、タイムは落ちていました。凄かったのはやはり優勝したハミルトンです。ペレスを抜いて先頭に立つと素晴らしいタイムで走り続け、レース終盤にはペレスに対してピットストップ分のギャップを築きました。それも出来る限りこのタイヤで引っ張るため、タイヤを労りながら走ってです。

仮に残り10周でタイヤが保たなくなって、もう1回ピットインせざるを得なくなったとしても、ペレスのすぐ後ろでコースに戻ることになるので、すぐに抜き返したと思います。メルセデスはタイヤの摩耗を懸念してピットストップ分のギャップができた後はハミルトンをピットインさせようとしていましたが、彼は自分でピットレーンの入り口が濡れているであろうことなどを考慮して、ピットインを避けました。
あのタイヤを最後までしっかりとマネージメントしながらミスなく素晴らしいペースで走り、最後はピットレーンの路面状況まで考えるなど、トータルで完璧なレースをしたと思います。さすがとしか言いようがありませんし、7度目のタイトルを決めるのにホントに見合った勝ち方をしました。
ちなみにレース後のハミルトンのタイヤは、溝がまったく無くなっていましたよね。こんなタイヤでよく走れたなと思う人も多いかと思います。しかし、もともと溝は排水のためのものなので、路面が湿っているだけで水はけを必要としない状況であれば、溝は必要ありません。
逆に溝がなくったインターは、ゴムのブロックが動き過ぎて過熱することも抑えられますし、ゴム自体はドライタイヤよりも柔らかいので、今回のレース終盤のような状況にはとても適していました。もちろん、摩耗しすぎてベルトが見えるようになってしまっては危ないですが、ハミルトンはそこら辺を良く読み切って走りました。改めて彼の凄さを感じられたレースでした。
