更新日: 2020.12.21 17:07
角田裕毅インタビュー(前編):2020年はメンタル面の成長を実感「弱点だった緊張や焦りが解消された」
──今年のレース中、これはヤバイなと思った瞬間はありましたか。
角田:危険だなという意味では、スパのオールージュでしたね。あそこは全開で行けるか行けないかギリギリのコーナーなんですけど、予選でポールポジションを取ったときには、その時だけ全開でした。オーバーステアが軽く出るくらいギリギリで、一歩間違えれば時速300kmでバリアに突っ込んでしまう。そこは避けたいし、勇気がいったし、スリリングなコーナーでしたね。
バトル面では、バーレーン2戦目レース1の、マゼピンを1コーナーで抜いたときですね。首位を走っている彼が抜かれたくない気持ちだったのは、すごくよくわかる。僕が前にいても、少しはブロックしますし。なので寄せてくるだろうとは、予想していました。でもまさかピットロードの壁ギリギリまで寄せるとは想定外で、あとほんの少しでぶつかって、ポイントが取れなかった。そうなれば、今こうして、この場でお話もできていなかったと思います(苦笑)。その意味であのオーバーテイクは、やばかったですね。
──ヨーロッパに来てからの2年で、自分で成長を実感した最大のことは何でしょう?
角田:特にこの1年間で大きく成長したと思うのは、メンタル面ですね。ドライビングもタイヤマネージメントは、F3からF2に来たこの1年で改善しました。でもそれ以上に、メンタルが大きかったです。F2に上がった際にメンタルトレーナーをつけてもらって、予選やレースにどんな気持ちで入っていくか、実際にはどうだったか、ダメだったところはどう改善したらいいのか。毎回みっちり話し合いました。
シーズン前にまず僕の性格や考え方を知るために、テストを受けました。その結果から、僕が先のことを考えがちだというのをトレーナーは把握していた。今年スーパーライセンスを取れなかったらどうしようとか、このレースをしくじったらどうしようとか。その分、緊張も増すし、焦りも出る。そこが僕の弱点でした。
それを改善するために、ふたりで試行錯誤しながらいろんなことを試していった。シーズン中盤ぐらいには、目の前のことに集中できるようになった。予選直前だったら1コーナーでのブレーキングや、シフトダウンのやり方とか、それだけしか考えない。あるいはフリー走行ではエンジニアから走行プランを渡されるんですけど、そのプランの遂行だけを考えるとか。それができるようになったおかげで、緊張や焦りはずいぶん解消されましたね。
それから僕は、けっこう熱くなりやすい性格だったんです。アタック中に誰かに邪魔されると、無線でわあわあ叫びがちだった。それは止めた方がいいとチームからも言われていて、実際叫んでる時とそうでない時と、結果も雲泥の差だったんです。一番の例がバーレーンの2連戦で、1戦目はフリー走行で赤旗中断とかアタック中に邪魔されたりで、言わないようにしようと思ってたのに、無線でわあわあ言ってしまった。そしたら予選で焦りが出たんでしょうね、渋滞や赤旗に捕まる前にタイムを出そうとしてスピン、グリッド最下位になってしまった。
2戦目は完璧な週末にしようと心がけて、その時のフリー走行も何度も邪魔されたりしたんですが、叫ぶのはグッと抑えたんですね。それで次の周にアタックし直すとか、当たり前だけど今までできなかったことが、できるようになった。結果的にまったく違う週末になって、それが選手年3位、スーパーライセンス取得につながった。もちろんまだ改善の余地はありますけど、そこは大きく変わりましたね。
(後編に続く)