更新日: 2020.12.31 02:22
コロナ禍のリモート取材で感じたもどかしさと、浅はかすぎた『ピンクメルセデス』批判/2020年シーズンレビュー(2)
レーシングポイントのマシンRP20が、あまりにもメルセデスAMGの2019年型W10に酷似していたことで議論が巻き起こった。
F1の世界では模倣は当たり前のように行われてきたし、ほとんどのアイディアがコピーされてライバルチームのマシンに投入されていく。それ自体は今さら責められることでもなければ、拮抗した競争を実現するためには必要なことでもあると思う。
ただしレーシングポイントRP20が問題視されたのは、ふたつの観点からだ。
ひとつはマシンコンセプトから完全にコピーしており、ディテールまでほぼ一致しているということ。つまり、コンストラクターとしてのプライドはないのかということだ。
しかしそれはあくまでスタート地点であり、シーズンを経るなかでレーシングポイントは独自の開発を進め、サイドポッドなどは完全に独自のスタイルへと進化してきた。そもそも2021年に予定されていた大幅レギュレーション改定に向けて、2020年のうちにメルセデスAMG製パワーユニット&ギアボックスに合わせてマシンコンセプトをレッドブル型からメルセデスAMG型へと移行して準備を整えるというのがレーシングポイントの考え方だった。
メルセデスAMGを完全コピーすることがゴールではなく、コンセプト刷新に当たってはメルセデスAMGに倣い、そこから新規定に向けて独自の進化を遂げることが彼らの目標であり、実際にそれを実行してきた。だからこそ2020年シーズンも終盤戦まで高いポテンシャルを維持し、終盤戦に初優勝という偉業を達成したわけだ。
そこまでを理解した上でRP20の設計思想というものを評価すべきであり、そうすれば“ピンクメルセデスAMG”という批判はあまりに思慮の浅いものだと言わなければならないだろう。
ふたつめの問題点は、コピーの方法についてだ。
前述の通りライバルチームのアイディアを模倣するのはF1界の常であり、どのチームも他車のパーツを様々な角度から写真撮影し、それをリバースエンジニアリングでCADデータ化するということは当たり前のようにやってきた。これ自体はRP20の場合も合法と認められている(規定変更で今後は制限されることになったが)。
つまり、“ピンクメルセデスAMG”と批判された箇所のすべてが合法と判断されたわけだ。しかしリヤのブレーキダクトが昨年メルセデスAMGから購入したパーツを改変したものであったために違法と判断され、15ポイントを剥奪されるに至った。
もし昨年購入したものをそのまま使っていれば合法で、今季型マシンに合わせるために改編すれば「独自設計でない」という理由で違法になる。その線引きも曖昧なら、世間ではこうした詳細は理解されないまま「似ているから違法とされたのだろう」というイメージで見られることになってしまった。
違法性を訴えたルノーにとっては、グレーなチームだから負けても仕方がないというエクスキューズにはなったかもしれないが、F1界全体にとってはあまり良いことではなかったように感じられる。