「ル・マンへの挑戦で将来のキャリアの可能性を開く」
by グレン・フリーマン
現役F1ドライバーとして2015年にル・マン24時間を制したニコ・ヒュルケンベルグは、数週間に渡ってF1のグリッド上でライバルたちの羨望を浴び、フランスの歴史あるレースへの憧れに火をつけた。そして彼らの多くが、シングルシーターでのキャリアを終えた後にスポーツカーへと転向することを、前向きに考えるようになった。バトンもそのうちのひとりであり、2017年にグリッドから退くことを発表したとはいえ、ル・マン参戦は望みのひとつだと繰り返し述べている。
ヒュルケンベルグはル・マン参戦を真剣なものと捉えて、レース環境に慣れるために5月に開催されたスパ6時間にもポルシェで出場している。マクラーレンでの役割を考えれば世界耐久選手権にフルタイムで出場するのは無理だとしても、少なくともヒュルケンベルグ的なアプローチをするだけのスケジュールの余裕はあるはずだ。

1台で複数のドライバーが出場できるスポーツカーレースでは、スポット参戦が可能だ。バトンがバンドーンにシートを譲った大きな理由のひとつには、より余裕のあるスケジュールを求めたという側面がある。二度の長距離レースへの出場は、スケジュールに余裕を残しつつも、レースへの欲求を満たすものとなり得るだろう。
ホンダと提携するドライバーがトヨタに乗ることは考えづらいが、それ以外との交渉はそれほど難しいとは思わない。マクラーレン・ホンダからの承認は必要ではあるものの、非常識とは言えないレベルでの、稀なケースが見られる可能性はある。最初のチャンスとなるレースでの取り組みで、バトンがどれだけル・マン出場を真剣に望んでいるかが見て取れるだろう。またこれによって、将来に向けてバトンのスポーツカーでのキャリアが開かれることにもなる。