次にレースでの自分の強みを聞かれた角田は、考えることもなく「自分の長所はブレーキングとオーバーテイクだと思います」とはっきりした口調で話した。テストでは一度だけオーバーテイクをしたという角田だが、それはレースシミュレーション中の出来事だったため、これまでとはまったく違う経験ができたようだ。
「ブレーキングはF1でも重要ですし、コーナーに入るときもすべてはブレーキングから始まります。あとはオーバーテイクで、僕は(テストで)一回だけジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)をオーバーテイクしました。レースシミュレーション中だったので、普段とはDRSの効き方もまるで違い、ブレーキングの止まり方もまったく違ったのですが、無事にコーナー進入でオーバーテイクすることができました」
プレシーズンテストでは多くのことを学び、自信も掴んだ角田だが、このシーズンオフはどのように過ごしていたのだろうか。もちろんF1マシンのGに耐えるため首と体幹を鍛えるトレーニングも続けているということだが、意外にも普段については20歳の若者らしい姿を見せた。
「現在はイギリスのミルトンキーンズに住んでいるのですが、ロックダウンで外で行うスポーツもできないので、普段は日本の友達とFPSゲームの『Apex Legends』をプレイしています。結構、僕は熱くなりやすくて、レース中の無線でも叫んでしまうのですが、そういったところがゲームにも出ていて、相手に負けたときに叫んでしまいますね(笑)」
「でも、感情というのは普段の生活にも出ると思うので、ゲームでも自分をコントロールできるように、トレーニングとまではいかないですが、そういう熱い性格をコントロールするようにしています。また、そういうときでしか日本語での会話ができないので、普段はリラックスして楽しんでいます」
そんな現代っ子的な過ごし方も語った角田だが、再び話題がF1に戻ると表情を戻して開幕戦、そしてシーズンを通しての目標を熱く語った。
「開幕戦の目標はないです。ただポイントを獲得できるように頑張るだけです。今までF1の経験がないので想像ができません。なので、僕が今持っているパフォーマンスのすべてを出し切って最初からプッシュします。そのなかで表彰台や、もちろん優勝もしたいですが、現段階では何が起こるかわからない。あまりミスも恐れず、ガンガン攻めていければなと思います。そこでミスをしたりするときもあるかもしれませんが、そういったところから今の自分の弱点などが分かると思います。ミスや経験から、後半はアジャストしてまとめ上げられたらなと思います」
そして、今シーズンからF1に参戦する角田が一番楽しみにしているサーキットはもちろん「圧倒的に鈴鹿サーキット」と、ホンダドライバーとして優等生的な回答。
「僕がFIA-F4時代に走ったタイムとF1マシンではかなりタイムが違うので、そういったタイム差も楽しみにしています。なにより、日本のモータースポーツファンのみなさんの前で走ることが非常に楽しみです。好きなコーナーはデグナーとスプーンなので、そこは自信を持って走り抜けたいと思います」と、秋の凱旋帰国を楽しみしてる様子だった。
オンライン会見は終始和やかな雰囲気で進められ、途中には笑顔も見せた角田。初のF1の舞台で20歳の日本人ドライバーがどんな活躍を見せてくれるのか、まずはバーレーンでの開幕戦、そしてこれからの活躍にも目が離せない。



