更新日: 2021.04.29 14:07
【角田裕毅を海外F1ライターが斬る】イモラ編:自分にプレッシャーをかけてすべてぶち壊しに。ガスリーのタイムは見るな
話が脱線しているって? 失礼、角田の話に戻ろう。彼はイモラで何度か速さを見せた。だが、自分にプレッシャーをかけすぎて、チャンスをぶち壊した。FP3ではピエール・ガスリーより0.3秒遅かった。だがイモラはほんの小さなミスひとつが大きく響くコースだ。先輩とのギャップをそのレベルに抑えられたのはむしろ立派だったと思う。2時間後にそのパフォーマンスを保てていれば、Q3に進んで9番グリッドを確保していただろう。だが予選の失敗で最後尾スタートになり、1周目にぐんと順位を上げたものの、リスタートでまたもやすべてをだめにした。ミスなく走り切っていれば、7位に入れたはずだ。失敗する前にはピエール・ガスリーよりかなり上を走っていたのだから……。
学習速度については問題はない。いま彼がやらなければならないのは、ソーシャルメディア、インターネット、悪気なくプレッシャーをかけるファン、ジャーナリストなど、外部とのあらゆる接触を避けて、できるだけ多くの時間をチームと一緒に過ごすことだ。なかでも避けなければならないのは、マルコからの電話に出ることだ。あの男は興奮すると相手が寝ているだろう朝7時でもお構いなしに電話をかけるが、その電話に出て何かいいことがあったという者は今まで誰ひとりいない。
それから、予選が終わるまでは、ガスリーのラップタイムを絶対に見てはいけない。そんな風に、自分のやるべきことに集中すれば、あとは何の心配もいらない。

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これが私から角田への無料のアドバイスだ。純粋な善意でやっていることで、何の下心もない。だが、F1での最初の数年をうまく乗り切っていくには、やはり優秀なマネージャーは必要だと言わざるを得ない。ちなみに、私のギャラは人が言うほど高くはないので、その点はご心配なく。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。