28周目、ハミルトンの担当エンジニア、ボニントン(通称ボノ)がこんなメッセージを送った
ボニントン:いいぞ、ルイス。もう少しだ。ギャップも縮まっている。今、1秒3だ
ハミルトン:わかった
ガスリーを追撃するハミルトンはこの時点で、その差を1秒3まで縮めていた。ボノの言う「もう少し(It won’t be long.)」は、「ピットインまでもう少し」という意味と思われる。レース後、トト・ウォルフ代表は「スタートタイヤが苦しかったので、あそこでピットインするしかなかった」と敗因を述べていた。
しかしこの無線を聞く限り、メルセデスは最初からアンダーカット作戦で、ガスリーの前に行けると踏んでいたようだ。そして29周目、真っ先にピットに向かい、ハードタイヤに履き替えた。だがハードの温まりが悪く、ペースが伸びない。次周にピットインしたガスリーは、コンマ4秒差でハミルトンの前でコース復帰した。
ハミルトン:どうしてまだ(ガスリーの)後ろなんだよ!

思わず叫ぶハミルトン。しかしまだ続きがあった。2周後に入ったセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が、ハミルトンとガスリーを追い越して7番手から5番手に上がったのだ。
ハミルトン:いったいどういうことなんだ。ふたりの後ろになってしまった
ハミルトンは落胆と怒りが収まらず、その後も無線で不満を言い続けた。
ハミルトン:なんて言ったらいいかわからないよ。タイヤはもっといけるって伝えていたよね。もっとピットを遅らせるべきだったんだ
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(2)に続く