もうひとり、ハードタイヤでスタートした角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は、ウイリアムズの2台に前を塞がれて順位を上げることができない。
マティア・スピ二:ペースはすごくいいぞ、ユウキ。そのままプッシュだ

担当エンジニア、マティア・スピニが懸命に励ます。角田もそれに応えて終盤66周目にはハミルトンに次ぐ総合2番手となる自己ベストを叩き出した。しかし抜けない。72周目、スピニの指示が飛んだ。
スピニ:ハミルトンを使って、ラティフィを抜くんだ
ハミルトンが周回遅れのラティフィを抜くのに乗じて、いっしょに抜いていけという指示だった。しかしその試みもうまく行かず、角田は16位完走に終わった。
3台にオーバーカットされ、7位がほぼ確定したハミルトン。残された道は、ファステストでの1ポイント獲得しかなかった。担当エンジニアのボニントンも当然それは考えていたはずだ。しかしハミルトンがせっついても、ボノは慎重な姿勢を崩さなかった。
ハミルトン:どんな計画でいく?
ボノ:今のところは、何もない。もう数周見よう
ハミルトン:待ってくれ。貴重なチャンスを失ったんだ。いまは1ポイントでも欲しい。タイヤがダメになる前にね
そしてハミルトンは直後の67周目にピットに向かい、中古のソフトに履き替えた。コースアウトした時には、首位フェルスタッペンが4秒ほど後ろにいた。

ボノ:フェルスタッペンがすぐ後ろにいるけど、ファステストはまだ出さなくていい
ハミルトン:え? まだ出さなくていい? 出さないといけない? どっちだ?
ボノ:すぐ出さなくていい
ボノの指示にもかかわらず、ハミルトンはピットインの2周後にファステストを叩き出した。ソフトタイヤのタレを心配したのだろう。
レース後半になってもライコネンを抜きあぐね、苦しい戦いの続くリカルド。51周目前後には、こんな指示がエンジニアのトム・スタラードから飛んだ。
スタラード:ダニエル、もうすぐノリスの青旗だ。3番手を争っているから、スムーズに頼む
リカルド:わかった。すぐに譲る。……もう青旗について、言わなくていいよ
かつて表彰台の真ん中に立ったこともあるモナコで、チームメイトに周回遅れにされる屈辱は想像するにあまりある。