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投稿日: 2021.06.16 18:23
更新日: 2021.06.16 18:24

多くの問題が発生するも、ドライバーの腕と勇気に救われたバクー。破綻が垣間見えた“興行優先主義”


F1 | 多くの問題が発生するも、ドライバーの腕と勇気に救われたバクー。破綻が垣間見えた“興行優先主義”

 混乱したレースにおいて、レースディレクターの判断も適切ではなかった。セーフティカーが出動するまでに、ストロールのケースでは40秒以上、フェルスタッペンの場合には80秒以上も時間を費やした理由は理解できない。

 マイケル・マシ(F1レースディレクター)はダブルイエローで十分に減速しなかったドライバーを問題視するが、イエロー区間以外では“レース”が続行される状況ではその減速が難しいからこそ、VSCルールが導入されたのではなかったか。

 安全を優先するなら、ストロールの事故の時点で赤旗が提示されるべきだった。マシは「コース右側にマシンが通れるだけのスペースがあった」と説明するが、カーボンファイバーの鋭い破片が飛び散っていないと、誰が確信できただろう?

 フェルスタッペンの事故のあとも、レッドブルが「赤旗中断で全員がタイヤを交換したほうがいい」と助言するまで決断しなかった。

 そして赤旗を出した理由は“セーフティカー先導でレースを終わらせたくなかったから”と言う。実質2周のスプリントレースのための赤旗だったのだ。FIAはいつから“興行”を優先してレースをコントロールするようになったのだろう?

2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 赤旗によってピットレーンに戻る各マシン
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 赤旗によってピットレーンに戻る各マシン
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 赤旗によってピットレーンに戻る各マシン
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 赤旗によってピットレーンに戻る各マシン

 こんな異常なコンディションのなかで、グランプリのクオリティを保ったのはドライバーの腕と勇気だ。週末を通じて速さを発揮してきたセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)は、スタート直後の鮮やかなオーバーテイクで予選のロスを取り戻し、フェルスタッペンにとっても心強いチームメイトの役割を完璧に果たした。

 モナコ同様に見事なタイヤマネジメントを発揮したセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は、11番手スタートからここでもオーバーカット作戦に成功。さらに、35周終了時点のリスタートでは1コーナーでシャルル・ルクレール(フェラーリ)を、ストレートでピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)をパスして2位表彰台の基盤を築いた。ゴールの後の笑顔が、何よりも雄弁に最高のレースを語っていた。

 ラスト2周、予選のようなスプリントでルクレールと激しく争ったのはガスリー。50周目のストレートでルクレールが前に出ると、スリップストリームを使って再びフェラーリの前へ。1コーナーでインに入り、2コーナーでしっかりと表彰台を確保した。

 ドライバーたちのおかげで、異例のスプリントは見ごたえのある華やかなものになった。しかしレースコントロールは“自分たちの判断が正しかった”と考えてはならない。いくつもの疑問符が残ったままだ。ドライバーの腕と強いメンタルに救われたことを忘れてはならない。

2021年F1第6戦アゼルバイジャンGPのレースフィニッシュ
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGPのレースフィニッシュ
セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)、セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP表彰式 セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)、セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP レース後、健闘を称えあうピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP レース後、健闘を称えあうピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)
auto sport No.1555
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