レースではハードタイヤがメインになると想定していて、結果的にハードタイヤとミディアムタイヤの性能は予想どおりでした。ミディアムはややリヤに不安がありスティントを通じてプッシュすることはできず、一方でハードはプッシュし続けることができるタイヤと踏んでいましたし、実際にそうなりました。ただレースではフロントタイヤが金曜のフリー走行の時ほど機能しなくて摩耗も進んだので、特に左フロントタイヤの摩耗に気をつけて走らなければならない状態でした。ミックは長い第2スティントでこれをうまくやってのけてくれました。
レース戦略はタイヤが比較的長持ちするので1ストップになります。ミックとニキータの予選順位を考えて、ミックはセオリー通りのミディアム→ハード、ニキータは逆のハード→ミディアムにすることにしました。これはいくつか理由があるのですが、ニキータには燃料を多く積んだレース序盤にリヤに不安のあるミディアムで走るよりは、攻められるハードを与えたかったということがあります。彼はまだタイヤマネージメントに改善の余地がありますし、なにせリヤが安定しないクルマではタイムを出せないので、より安定して走れるであろうハードでスタートしました。

レースが始まると予想どおり、ミディアムはリヤが厳しくなっていきました。ですからミックは15周目にピットインしてプラン通りハードで最後まで走ることに。ニキータはなるべくハードでの第1スティントを長く走って、レース終盤にミディアムでいい状態で走らせたかったので、31周目までひっぱりました。タイヤ的にはまだ走れたのですが、青旗の状況を考慮してこのタイミングでピットインするのが最適だという判断です。ニキータは残り21周をミディアムで走りましたが、やはりリヤのグリップがすぐに落ち、前を走っていたミックに追いつくことはできませんでした。
残念ながら結果は19位と20位でしたが、ふたりともベストを尽くしてくれました。ミックとウイリアムズは同じ戦略だったのですが、ウイリアムズのタイムで走ることはできませんでした。しかしGPSから出てくる車速を見ると、コーナーではよく走れていたことがわかります。ウチはどうしてもDRSなしの状態での直線スピードが伸びないので、特にポール・リカールのようなサーキットでのレースはクルマ的に厳しいです。そのなかでふたりともよく走ってくれました。

レース序盤の4周目にはニキータがミックを追い抜きましたが、このやり方はあまりいいものではなかったです。ミックはあの時、ターン1の進入でジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)に対してアタックをかけたものの成功せず、そのせいでターン2の立ち上がりが非常に悪かったのです。ここでニキータは一気に差をつめ、ターン3の進入でミックのインに飛び込んできました。ただターン4出口でミックに対してまったくスペースを残さなかったので、ミックはエスケープロードに逃げることになりタイムを5秒ほどロスしました。
これは特にチームの現状を考えると、チームメイトに対する行為としてあまり褒められるものではありません。しかし、今回はレース後に話をすることはしませんでした。ニキータにはまず自分で考えて結論を出してほしいのですが、もしこの先もう一度このようなことがあればチームとして介入することになると思います。
ニキータは特にミックに勝とうとすることにどうしても集中してしまいます。今年の目標はチームメイトとバトルをすることではないと何度もはっきりと言っているのですが、頭ではわかっていても、どうしてもそうなってしまうようです。これからニキータが成長していくには、この点は改善しないといけません。
3連戦の残り2戦はオーストリアのレッドブルリンクで行われます。天候が荒れそうですが、少ないチャンスでもものにできるようにやってきたいと思います。

