SC明けにリカルドに抜かれて11番手に後退したルクレールは、ブレーキの不調を訴える。
ルクレール:ブレーキはどうなっているんだ。ブレーキバランスなのか。すごく変だ
ルクレールはこの時点で5番手ガスリーに始まるDRSトレインの真ん中にはまって、身動きの取れない状態だった。しかしソフト勢の角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)、ガスリー、ランス・ストロール(アストンマーティン)が次々にピットに向かうことで、徐々に順位を上げていった。
下位集団ではキミ・ライコネン(アルファロメオ)も、カルロス・サインツ(フェラーリ)とアロンソに挟まれる形で、マシンと格闘していた。
シモン・ショートン:バトルの最中だと思うけど、ブレーキ温度がかなり上がっている

乱流のなかでのバトルで、ブレーキにかなりの負荷がかかっていたようだ。数周後にはライバルたちの動向が伝えられた。
シモン・ショートン:ラッセルとサインツが、タイヤを保たせろと言われている。1回ストップで行くつもりだろう
ソフト勢4台のすぐ後ろを走るリカルドに、スタラードが角田のペースを伝えた。
スタラード:角田がタイヤにてこずり始めてる。まだストロールの前にいるけどね
リカルド:了解した
担当エンジニアが何かを言った際、リカルドはunderstood(わかった)ということが普通だ。それに対し他のドライバーは、copyと返すことが多い。「言っていることがコピーできている」から「理解した」という意味に派生したもので、1970年代にアメリカでCB(シチズンバンド、市民用短距離無線)が流行した際に使われた言い方が、一般に広まったとされる。
12周目前後、ノリスはハミルトンの追撃をなかなか振り切ることができない。
ノリス:僕より速いんだけど。どんなリスクを冒すべきなんだ?
ジョゼフ:左リヤタイヤを使いすぎてる。何とか使わずに、抑えるんだ
ところがその後、ノリスがペレスを押し出したとして、5秒ペナルティを科されてしまう。ノリスが当然怒るであろうことを予期してジョゼフがなだめにかかるが、ノリスの不満は収まらない。
ジョゼフ:5秒ペナルティだ。でも大丈夫だ
ノリス:え? なんで?
ジョゼフ:心配するな。リカルドとのギャップは24秒9ある
ノリス:わかった。ターン1のことなのか? コース外の連中は何を期待しているんだ
「ターン1のことか」という言葉からも、ノリスはターン4でのペレスとのバトルがペナルティ対象になったとは、夢にも思っていなかったようだ。
