戦う相手がひとりしかいない場合、レーステクニックを発揮することはとても難しい。さらに、レースの展開上、その機会はめったに訪れない。ハースは時にふたりの戦略を分けて、スタートタイヤを別にすることもある。しかし同じ条件で、同じ戦略で戦うと、ほとんどの場合、シューマッハーがチームメイトを引き離していく。

オーストリア・レッドブルリンクでの1戦目、一時ふたりがバトルをする状況もあったが、シューマッハーが前に出た後、ふたりともブルーフラッグに苦しめられることになった。マゼピンは「ウサギに捕まるのを待っているニンジンのようだ」と言った。面白い表現だが、トップグループのマシンを次々に前に出さなければならず、それによってどんどん前とのギャップが広がってしまう、苦しい状況だった。
シューマッハーにとって今年の目標のひとつはQ2進出であったのに対し、マゼピンは、クリスマスプレゼントに欲しいのは、リードラップでレースをフィニッシュできること、と言っている。それは来年までは実現しないかもしれないが、オーストリアの同じサーキットで2回レースが行われたことで、2戦目には多少状況は改善した。

最初のレースでは、シューマッハーが2回、マゼピンが3回周回遅れになり、予選では速い方のハース、すなわちシューマッハーとQ2との差は0.9秒だった。2戦目のオーストリアでは、その差が0.4秒に縮まった。そしてマゼピンはリーダーから2周遅れでフィニッシュした。ハースのドライバーたちは、1回目のレッドブルリンクでの経験をしっかり生かして戦ったのだ。
シューマッハーに遅れを取っていることについて、マゼピンは少なくともひとつ理由を挙げることができる。現在のマゼピンのシャシーはチームメイトのものより重いということで、ハースは彼のために新しいシャシーを作っているところだ。だが、シャシー変更が行われるまで、マゼピンはあと数戦待たなければならない。
3連戦の最後に、残念ながらマゼピンは最終ラップでダブルイエローフラッグを無視したとして30秒加算のペナルティとペナルティポイント3を科された。

シュタイアーマルクGP前に、ハースは、シュタイナー代表が“マゼスピン”というニックネームをつけられたマゼピンにコマをプレゼントする動画を公開した。「マシンでスピンせずに、こっちを回せばいい」と代表に言われて、マゼピンが笑ってコマを回す、ユーモアたっぷりな動画だった。だが、笑ってばかりもいられない。彼は9レースですでにペナルティ・ポイント5を科されている。出場停止となる12点に到達しないよう、今後はコース上でさらに慎重に行動する必要があるだろう。