一方、ノリスの担当エンジニア、ジョゼフの無線は、ちょっと毛色の違うものだった。
ジョゼフ:ランド、ヒロシが言うには、右フロントタイヤ内側にブリスターが見えるけど、深刻じゃないとのことだ
今井弘チーフエンジニアの名前が出るのは、確認できるだけでも今季3回目だ。なにかタイヤ関連の問題が起きたとき、ジョゼフは「ヒロシはこう言ってた」とノリスに伝え、安心させている。
終盤16周目、フェルスタッペンの優位はもはや動かなかった。ランビアーゼから、タイヤをいたわるように指示が出た。
ランビアーゼ:ハミルトンとの差は3秒になった。右側の縁石にはできるだけ乗るな
フェルスタッペン:わかった
ランビアーゼ:コーナー出口の縁石は、左側も乗らないほうがいいな

いっぽう、6周目の超高速チャペルコーナーでスピンして大きく順位を落としていたセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)はタイヤにダメージを受けていて、まったくペースが上がらなかった。
ヒュー・バード:チェコ、スロットルを戻せ。リタイアしよう
そして全17周のスプリント予選が終了した。
9番グリッドスタートだったカルロス・サインツ(フェラーリ)は、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)との接触で18番手まで後退。素晴らしい追い上げを見せたが、本人は不満そうだ。
サインツ:ラッセルは僕の前でフィニッシュしたんだよね。僕のレースを台無しにしたのに
リカルド・アダミ:今、審議中だ
結局ラッセルは、3グリッド降格ペナルティを受けた。しかしサインツにしてみれば、納得しがたいところだろう。さらにスタート自体で出遅れたことにも、サインツは不満を露わにした。
アダミ:P11だ。よく這い上がってきた
サインツ:ありがとう。でもスタートには満足してない。あとで話し合おう
対象的にアロンソ陣営は、大はしゃぎだった。
カレル・ルース:素晴らしい! P7だ。1周目がとにかく、ものすごかったね。
アロンソ:ショーを存分に堪能してくれたんじゃないかな。戦略も素晴らしかった。ところでこれって、Q4っていえばいいのかな?
ルース:ハハハ。それ、いいかも
自分たちが戦ったばかりのこのセッションはどう見てもレースなのに、スプリント予選と呼ばれることへの皮肉ということか。いずれにしてもアロンソのベテランの巧さが光ったスプリントレース、いや、スプリント予選だった。