取材・まとめ 柴田久仁夫

 34周目。4番手を走るランド・ノリス(マクラーレン)に、担当エンジニアのウィル・ジョゼフが情報を伝えた。

ジョゼフ:ボッタスは左フロントに大きなブリスターができている。終盤にもう1回入るかもしれない

 2番手を走るボッタスにはまもなく、ハミルトンに順位を譲れという指示が出た。

リカルド・ムスコーニ:チームオーダーだ。ルイスとレースするな

 その直後、17番手を走るセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)にピットインの指示が出て、40周目にピットへ向かった。

クリス・クローニン:問題が出た。リタイアだ

 一方、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)を抑えて11番手を走っていたライコネンは、燃費がギリギリだった。

シモン・ショータン(→ライコネン):角田とバトルしてるのはわかっているが、燃費が厳しい。これ以上は何もできない

 それでもライコネンは11番手を死守していたが、終盤47周目に角田をかわして12番手に上がったペレスに抜かれる際に接触、16番手まで後退してしまった。

キミ・ライコネン(アルファロメオ)&セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
2021年F1第10戦イギリスGP キミ・ライコネン(アルファロメオ)とセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)

 すでにボッタスにはチームオーダーが出ていたが、ハミルトンはボッタス以上にブリスターに苦しみ、なかなか抜き切れない。

ハミルトン:バルテリについてくのは大変だ

ムスコーニ(→ボッタス):この周回のターン15で順位を入れ替える

 40周目、ボッタスに譲られて2番手に浮上したハミルトンは、さっきまでの悲観的な言葉がウソのように、ファステストラップを連発してルクレールを猛追した。ルクレールも必死に逃げる。

パドロス:レースモードだ。最後までフルプッシュで行け

 メルセデス陣営としては、ボッタスもハミルトンに続いて、1-2フィニッシュを成し遂げたいところだ。

ムスコーニ:ルイスはレース終了前にルクレールに追いつく。あとに続くんだ

 40周目、42周目、そして44、45周目と立て続けにファステストラップを出し続けるハミルトン。

ボノ:またファステストだ
ハミルトン:捕まえられるかな
ボノ:できるとも

シャルル・ルクレール(フェラーリ)&ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1第10戦イギリスGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)&ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 そしてチェッカー2周前の50周目、フェルスタッペンと接触事故を起こした同じターン9で、ルクレールを抜き去っていった。一方レッドブル陣営は、10番手まで上がっていたペレスにピットインの指示を出した。ハミルトンからファステストラップの1ポイントを奪うためだった。

 ペレスは見事に最速タイムを叩き出したが、16位でチェッカー。彼自身はファステストポイントは得られず、ノーポイントに終わった。イギリスGPでレッドブル・ホンダが獲得したポイントは、スプリント予選でフェルスタッペンが獲得した3ポイントのみだった。

クリスチャン・ホーナー:このファステストは、タイトル争いにすごく重要だった。厳しいレースだったけど、このファステストには感謝しているよ、セルジオ
ペレス:本当に、なんて1日だったんだ。次の週末は、もっと強くなって戻ってこよう

 タイトル争いにおいてフェルスタッペンはハミルトンに8ポイント差まで迫られ、レッドブルとメルセデスの差もわずか4ポイントに縮まった。

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