世界一、若手ドライバーのことに詳しい私は、角田がバーレーンでやってのけたことを、毎戦再現するのは不可能であると分かっていた。開幕戦で彼はいい仕事をした。だが、バーレーンではF3時代にもF2時代にも走ったことがあったし、直前にはアルファタウリでテストをした。つまり、いわば彼にとって勝手知ったる場所だったからうまくいったのだ。メルボルンでシーズンが開幕していたら、ああはいかなかっただろう。
ドライバーをF1に昇格させるためには、デビュー前にジュニアフォーミュラである程度の年月を過ごさせる必要があると思う。速さがあり、素晴らしい予選ラップを走り、目の覚めるようなオーバーテイクを成功させる力があるドライバーかもしれない。しかし経験が浅いと、小さいミス、大きなミスを犯す可能性がある。そうするとたくさんのチャンスを失うのだ。フランツ・トストが角田に対して忍耐強く接していることは意外ではないが、怒りっぽいヘルムート・マルコがまだ短気を起こしていないことには驚いている。これ以上あの子がミスをしたら、怒りのあまり頭が爆発するのではないかと思うが。

総合評価を下すとすると? 私ならF1デビューシーズン前半戦の角田に10点満点で6点の評価を与える。後半戦にはもっと安定したパフォーマンスを見せて、ミスを減らして、ポイントを稼いでほしいところだ。それができなければ、シーズン全体での評価はもっと下げざるを得ないだろう。

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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。