──日本GP中止に関して、田辺TDは鈴鹿へかける思いは大きかったと思いますが。
田辺TD:昨年も中止になり、それでもF1自体は開催を続けてきました。しかし日本の状況から今年も中止になりました。とにかく残念です。その気持ちしかないです。1987年以降、脈々と続いてきた伝統が途切れた残念さもありますし、母国GP、ホンダ最後の日本GPが開催されなかったこと、最後の姿を日本のファンに見せられないことは本当に残念です。角田裕毅選手にとっては凱旋レースでもあったわけで、鈴鹿を走らせたかったです。
開催に向けてはこちらの関係者、鈴鹿サーキットの人々が長い間努力を重ねてきました。そのことには感謝しかありません。本当に残念ですが、ただ鈴鹿での日本GP自体は今年が最後というわけではありません。来年以降も変わらず応援していただければと思います。
──ヨーロッパでは感染がひどくてもレースを行っています。日本でもなんとか開催できなかったのでしょうか。
田辺TD:現状では仕方がないのかなと思います。いろいろなところで無理があったり、懸念があったりします。関係者は最善を尽くしてくれました。『やりようがあったのでは』など、私がそんなことを言える立場ではないです。
──ベルギーGPはレッドブルとの50戦目になりますが、ここまでをどう振り返っていますか?
田辺TD:2018年からトロロッソ(アルファタウリの前身チーム)と非常にいい関係を初めて、そこに翌年レッドブルが加わってきました。両チームの開発を担うレッドブルテクノロジーを核にして、両方と信頼し合いながらうまくやってこれています。もちろん初めての関係でしたのでいろいろなことがありましたけれど、そういったときも常に腹を割って話し合ってきました。その絆といいますか、仕事のやり方がどんどんと機能するようになっていきました。
今季の新世代パワーユニットの投入も、レッドブルテクノロジーとの協力関係がうまくいっていたからこそです。新しいパワーユニットを搭載することに関して、どんな車体が最適なのか両チームとしっかり話し合って開発を進められました。それが結果にしっかり出ていると思います。
一方で毎戦が勝負なので、外から見ているほどいいことばかりではないです。タイトル獲得へのプレッシャー、緊張感はレースごとに指数曲線的に上昇し続けています。しかし、それがホンダだけではなく、チームスタッフのモチベーションにもなっています。
──開幕時点では1レースずつ全力でやり切りたいと言っていました。今はそのときと気持ちの違いはありますか?
田辺TD:開幕時点ではライバルの実力が見えない部分がありました。そこは今も見えないのですが(笑)。もう(シーズンが)半分来てしまったという思いも、まだ半分あるという思いもあります。前半戦ではここまでいろいろなことがありましたが、不運は使い果たしたと思っています。とにかく最後まで全力で戦う気持ちに変わりはありません。


