更新日: 2021.09.17 12:37
【F1第13戦無線レビュー(2)】「どうしてピットインしたんだ」最速ラップをめぐってボッタスとチームが対立
一方ハミルトンは、レッドブルに対する仕掛けが早すぎたんじゃないかと疑問を呈した。
ハミルトン:(2度目のピットのタイミングは)アドバンテージがなかったんじゃないか。早すぎたと思う
ハミルトンの文句は、その後も延々と続いた。
ハミルトン:このタイヤで、かなり長く行かないといけないんだよね?
ピーター・ボニントン:わかってる。ちゃんとモニターしてるから
ハミルトン:前のタイヤ、ずいぶん残ってたのに、どうして早く入ったんだ?
ボノ:それは後で話そう
ハミルトン:このタイヤ、最後まで持たないよ!
48周目、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)が「ノーパワー!」と叫びながら、緊急ピットイン。そのままリタイアとなった。
後半50周目以降、1分13秒台のペースを安定して刻む首位フェルスタッペンにハミルトンも必死に追いすがり、54周目にはその差は2秒以内に縮まった。しかしすぐに3秒に広がるという展開。ハミルトンの口からも、さすがに弱気な言葉が漏れる。
ハミルトン:あいつら遠すぎる!
ハミルトン:タイヤがギブアップだ!
ここでボノが、ひとつの提案をした。
ボノ:このタイヤで最後まで走り切ろう。そして最後にファステストを出すんだ
ハミルトン:これ以上レースしないということか? いや、できるだけプッシュを続けたい
ボノ:わかったよ、ルイス。このまま行こう
その言葉通り、ハミルトンは1分13秒台前半のラップタイムを連続する。ところがパワーが思うように出ない。
ハミルトン:パワーカットが起きてる
ボノ:わかった。チェックしよう。いや、PUは問題ない
PUの不具合は杞憂だったようだが、60周目前後からハミルトンのペースはさすがに落ちていった。
ランビアーゼ:(ハミルトンとの)タイム差は3秒8だ。もうタイヤが終わってるんだろう
終盤67周目、ボッタスに「ボックス」の指示が飛び、2度目のピットイン。中古ソフトに履き替えた。ボッタスにしてみれば当然、ファステストを狙うつもりだった。ところがムスコーニからは、こんな指示が。
ムスコーニ:ファステストは、狙うな
ボッタス:なぜだ?
ムスコーニ:ルイスが最後にフリーストップをするからだ
ボッタス:じゃあどうしてピットインしたんだ
ムスコーニ:安全上の懸念からだ。タイヤが垂れていたからね
ピット滞留時間が5秒と長かったのも、ハミルトンにフリーストップのギャップを与えるためだった。しかしボッタスには、とうてい納得のいかない指示だった。かまわずプッシュを続け、69周目のセクター1、セクター2と最速タイムを更新し続けた。すると戦略担当チーフのジェームズ・ボウルズが無線に割って入った。
ボウルズ:バルテリ、ジェームズだ。ファステストのトライを中止するんだ
ボッタスはセクター3でようやく減速したものの、それでもハミルトンの持っていたファステストよりコンマ6秒近く速い1分12秒549を出してしまう。
ハミルトンはチェッカー2周前の70周目にピットイン。最終72周目に1分11秒097のファステストを叩き出した。そしてその間にフェルスタッペンは、2位ハミルトンに20秒以上の差をつけてチェッカー。後半戦2連勝を達成したのだった。
ランビアーゼ:成熟したドライブだった
フェルスタッペン:素晴らしい戦略だったよ
ハミルトン:彼らが速すぎた。今日も、今週末全体もね
ボノ:モンツァで雪辱だ