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投稿日: 2021.09.10 13:29
更新日: 2021.10.21 17:23

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】説明不足が招いたニキータの不信感。ドライバー間の取り決めを見直しへ


F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】説明不足が招いたニキータの不信感。ドライバー間の取り決めを見直しへ

 予選ではニキータとミックの間でポジションをめぐって問題が起こりました。当時の状況を説明すると、ウチは予選でコースに出て行く順番を毎レース変えているのですが、今回はニキータが先、ミックが後という順番でした。Q1では、2回目のランのアウトラップでニキータは遅めのアウトラップ、ミックは速めのアウトラップが必要だと明らかだったので、最後のランではミックのエンジニアに、もっとニキータと間隔をあけて送り出すように指示しました。

 しかし、ピット出口で多くのドライバーが前との間隔を開けるためにスローダウンしたので、結局はミックがニキータのすぐ後ろという形になりました。ここでミックは「前のニキータを抜いていいか?」と無線で聞いてきたので、「抜くなら早い段階で、3コーナーの出口で抜くように」と指示を出しました。この際ニキータにすぐにしっかりと説明しきれず、ニキータは「何故ミックは自分を追い抜いたんだ」と不信感を募らせます。

 その後ミックは前のランド・ノリス(マクラーレン)も抜き、12コーナー出口で前のクルマに従ってスローダウンし始めましたが、この時ニキータとの間隔も4秒近くあり問題ありませんでした。しかし12コーナーを立ち上がったところで、ニキータはスピードを上げ、ノリスを抜き、さらに13コーナー入り口でミックも追い抜こうとしました。これは想定外でしたね。さらにここにアタックラップ中のセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が来て、ウチのドライバーふたりでセバスチャンを妨害することになってしまい、大変申し訳なかったと思っています。

 もちろん予選後にギュンター(・シュタイナー/チーム代表)とふたりのドライバーとすぐに話し合いの場をもちました。言わなければいけないことはすべて言ったので、これを踏まえて再度モンツァでこれからどういう方針でいくかを決めます。

 決勝レースに関しては、ウチにとってはハードタイヤよりミディアムタイヤの方が使いやすかったですね。これはVF-21の性能によるところが大きいです。やはりクルマがあまりよくないと、どうしてもタイヤをうまく使える範囲が狭まってくるのです。逆にクルマがよくなると、どのタイヤでも使える幅が広がります。ザントフォールトのようなサーキットでは追い抜かれる心配がないので、それぞれのタイヤにあうように適度にコーナーリング速度を抑えてタイヤへの入力を管理してやればハードでもミディアムでも見た目上は似たようなラップタイムで走り続けることができます。しかし、もし2種類のタイヤで同じようにプッシュして走れば、また結果は違ってきます。

ニキータ・マゼピン&ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第13戦オランダGP ニキータ・マゼピン&ミック・シューマッハー(ハース)

 ウチのふたりのレースについては、残念ながらあまり言えることはありません。1周目の終わり、ピットストレートでのニキータのミックに対する動き方はハッキリ言って感心できません。ミックもここで引けばよかったものの、引かずに結果としてフロントウイングを破損することになりレースが台無しになりました。予選の問題も含めて、ニキータとミックの間での取り決めを見直す必要があります。バトルをするなかでもふたりにはお互いにチームメイトとして尊重しあい、チームを背負ってレースをしているんだという認識をしっかりと持ってもらいたいものです。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第13戦オランダGP ニキータ・マゼピン(ハース)
ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第13戦オランダGP ミック・シューマッハー(ハース)
小松礼雄(ハース エンジニアリングディレクター)
2021年F1第13戦オランダGP 小松礼雄エンジニアリングディレクター(ハース)


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