リカルドも頑張って、36周目には自己ベストを更新する。それでもボッタスとの差は、なかなか広がらない。スタラードは激励と指示を矢継ぎ早に出し続けた。
スタラード:今のラップはいいぞ
スタラード:ブレーキバランスを調整して、リヤタイヤを守るんだ
とはいえボッタスの脅威に直接さらされているのは2番手のノリスだ。リカルドと競り合って前に出たいノリスが、婉曲にそうしたい旨を伝える。しかしチーム側の答えは、ノーだった。
ノリス:このままがベストだと思うか
ジョゼフ:ランド、今の位置にそのままいるんだ

ボッタスの前には、まだペレスがいる。チームにしてみれば、ふたりが万一同士打ちをやらかして1-2フィニッシュがフイになることだけは避けたい。とはいえリカルドに対しては、ペースアップの指示を出した。
ジョゼフ:ダニエルが、もっと引き離せといわれてる
ノリス:うん。その方がいいと思う
結局そのまま順位の変動はなく、リカルドが真っ先にチェッカーを受けた。大喜びのリカルド。スタラードにとっても、もちろん長く待ち望んできた勝利だったが、一定の回転数を維持しないとエンジンがダメージを負ってしまう。喜びを爆発させているリカルドが、その操作をおろそかにしているのが、スタラードには気が気でない。
リカルド:勝ったぞ! やったんだ!
スタラード:ダニエル、レブリミットとリチャージに気をつけてくれ
リカルド:ハハハ。圧倒的な勝利だ
スタラード:そうだ、その通りだ。だけどダニエル、回転数を8000まで上げるんだ
リカルド:1-2なのか? そうなんだよな?
スタラード:そうだ、1-2だ。僕がこうして長旅を始めてから、マクラーレンで初めての1-2だよ
ちなみにマクラーレンの最後の1-2は、2010年カナダGPだった。
2018年末に自らの意思でレッドブルを去り、ルノー、マクラーレンと渡り歩いてきたリカルドにとって、2018年モナコGP以来3年ぶりの勝利。マクラーレンに移籍した今季は、ずっとノリスの後塵を拝してきただけに、いっそう待ちわびた勝利だった。
リカルド:サポートし続けてくれて、本当にありがとう。そして僕がもう(表舞台から)去ったと思った人たちに、僕は一度も去ってなかったと言いたい。ちょっとの間、横にいただけだ。みんな、ありがとう