前戦オランダGPの予選でニキータとミックがアウトラップでポジションを争ったことと、決勝レースで接触した件について、イタリアGPの前に話し合いを行いました。
ザントフォールトでの予選を振り返ると、ニキータよりも後にコースに出たミックは、タイヤを温めるためにアウトラップでスピードを上げて走る必要があったので、3コーナーでニキータを追い抜きました。その後ふたりは間隔を開けて走っていたので問題はなかったのですが、多くのクルマがアタックに向けてスローダウンしていた12コーナーで、ニキータがランド・ノリス(マクラーレン)を抜いたうえにミックも追い抜こうとしました。これがひとつの大きな間違いで、チームとしてもニキータがセクター3でああいうことをするとは思っていませんでした。
これまで僕たちはニキータとミックを信用して、自由に戦わせてきました。ふたりのドライバーを見て、最大限のパフォーマンスを発揮するためにはどうすればいいのかを常に考えて判断を下していたのですが、今後もこのようなことがあるのであれば、もっと単純なチームオーダー(たとえば、アウトラップでの追い抜きはいかなる状況でも禁止)を出すことになると彼らに伝えました。
オランダGPの状況に照らし合わせて考えれば、チームオーダーを出した場合はミックであれニキータであれ、アウトラップを速く走りたくても追い抜かせることはできません。そうすると、その後のアタックでそれぞれがタイヤの性能を最大限に引き出せなくなる可能性が増えます。イタリアGPで言えば、通常はチームメイト同士でスリップストリームを使えるようにするためにそれほど間隔を空けないでコースへ送り出しますが、アウトラップ中にドライバー間で変なことが起こるのを避けるために10秒ほど間隔を空けて送り出すことも可能なわけです。レースでも、DRSを使えるようになるまで追い抜きを禁止することになるかもしれません。

もちろんこれはドライバーにとっても、そしてチームにとってもいいことではありません。状況を最大限に活用したパフォーマンスを発揮できないし、お互いが恩恵を得られなくなるので、なるべくこのようなことはしたくないです。だからニキータとミックには、2度とこういうことを起こさないためにもふたりでしっかりと話し合うようにと言ったんです。
モンツァでは彼らが話し合いをしたというので、信頼して今まで通り戦わせました。予選とスプリント予選ではクリーンにやっていたので、少しは学んだのかなと思いましたが、レースではリスタート後に接触。ニキータは無線で「ミックが僕にターンインしてきた」と言いましたけど、あれはニキータが突っ込みすぎているだけです。レース後、僕とギュンター(・シュタイナー/チーム代表)、ニキータ、ミックの4人で話し合いをした時には、ニキータは完全に非を認めて謝っていました。オランダの時に問題だったのは、お互いが相手のせいにしていたこと。今回はニキータが非を認めたので、彼らの間でもきちんと解決できているのでしょうけれど、もうこういうことは起こらないと彼らを100%信用しているかというと、まだそうではありません。
それから、オランダGPの予選でミックが速くアウトラップを走るためにニキータを抜くということを正確にニキータに伝えられなかったのは、僕のミスでした。ミックがアウトラップを速く走りたがっていたのは最後のアタックをする前からわかっていたことだったので、彼のエンジニアにはニキータと間隔を空けて出すようにと指示しました。ですがピットレーン出口では、前のクルマと距離を取るためにみんながほぼストップしている状態だったので、結局ニキータのすぐ後ろをミックが走るという状況になってしまいました。残り時間もなかったので、ミックをすぐにピットから出さざるを得なかったのです。
失敗したなと思ったのは、僕がニキータのエンジニアに「3コーナー出口でミックがニキータを抜く」と伝えた際に、その理由まできちんと説明しなかったことです。オランダではニキータが先にコースへ出るという取り決めだったので、追い抜かれたニキータが「何があったの?」と聞いてもエンジニアは「あとで話すから」としか言えず、彼は不信感を抱くことになったのです。
これもグランプリの後に話し合って、今後こういうことがあったら、両エンジニアに同じことを同じタイミングで言うようにすると伝えました。両方が聞けるインターコムで話すとノイズが増えるので、お互いに関係することではない限りはそのチャンネルを使わないように気をつけていたのですが、あの時はそれが間違っていました。同じことを同時に伝えていれば、もうちょっとうまくコミュニケーションを取れたと思っています。
