レース終盤に差し掛かる41周目前後、ボニントンがハミルトンに降雨の可能性を伝えた。
ボノ:ルイス、レース終盤に雨の可能性があるよ
そして46周目あたりから、ターン5方面から雨が降り始めた。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:どんな感じだ?
フェルスタッペン:霧雨が降ってる
ジョゼフ:ランド、観客席の傘が開いてる
ノリス:そうだね。けっこう滑ってる
47周目には、ついにハミルトンが1秒以内に迫った。ノリスはターン5で止まりきれずコースを飛び出すが、なんとかハミルトンを抑えた。
この周にバルテリ・ボッタス(メルセデス)やジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)がインターミディエイトタイヤに履き替える。そして48周目にはフェルスタッペン、サインツもピットに向かった。
ジョゼフはノリスがいつクラッシュしてしまうか、気が気ではない。
ジョゼフ:路面はすごく滑りやすい。ターン10でみんなオフしてる
ノリス:黙れ!
ジョゼフ:インターを考えろ
ノリス:いやだ!
ハミルトンもピットインの決断がつかないようだった。それに対してボノが冷静に、そしてピシャリと言い渡した。
ハミルトン:雨が止むんじゃないのか?
ボノ:いや、ボックスだ、ボックス
こうして49周目にピットインし、2番手をキープしたままノリスを追う。だがその差は、15秒まで開いている。

ジョゼフ:ハミルトンが入ったぞ
ノリス:いや、ステイだ
ノリスがここまでジョゼフに反抗し続けるのも珍しい。せっかく奪い返した首位の座、初優勝の可能性を、なんとしても失いたくなかったのだろう。だが51周目、ついにノリスはピットインを決断する。しかし時すでに遅しだった。
ノリス:ボックスだ。これ以上は無理だ
ジョゼフ:わかった

こうしてハミルトンが劇的な逆転優勝。通算100勝の偉業を達成した。フェルスタッペンも2位をもぎ取り、3位にはサインツが入った。
ボノ:やったぜ、100勝だ!最後の(無線に対する)リアクションは素晴らしかったよ。もちろん素晴らしい運転だった
ハミルトン:みんなの努力だよ。キツかったけどね。100に行くまで、けっこうかかってしまった。でもみんなが頑張ってくれたおかげだ

レッドブル・ホンダ陣営も、優勝したような喜びようだった。
ランビアーゼ:P2だ、グッドジョブ。これなら行けるぞ
フェルスタッペン:そうだ、行けるぞ。あのラップしかなかった。最高のコールだった
クリスチャン・ホーナー代表:いい判断だ。正しいラップだった
フェルスタッペン:今日はポイントをそんなに失わずに済んだよ
ランビアーゼの「これなら行けるぞ(We’ll take that.)」という言葉は、タイトル獲得の手応えを指す言葉だったのだろうか。確かに不利が予想されるコースでも今回のような結果が残せれば、初戴冠も十分に可能だろう。