そんななかホンダF1が2021年シーズンを持ってF1活動を終了することが決まり、開発を前倒して、旧型に比べて低重心化、コンパクト化で空力を改善した新骨格のPUを投入したのが今シーズンだ。さらには高効率化と軽量化を実現した新型のエナジーストア(ES)もシーズン後半戦より投入している。
今年はストレート区間でも負けていないと浅木氏はいうが、実はステアリングを切った際に遅れをとっているように見える区間もあるのだという。

「昨年までは負けているので、負けの幅があるという解析結果でした。今年は負けないストレートも、負ける前回区間もあるので不可解です。第16戦トルコGPなんかはステアリングがまっすぐの区間では負けているようには見えないけれど、舵角が入ると負けているように見えます。ただ、メルセデスが舵角があるときにパワーを上げられるのかどうか、それはわかりません」
「回生量も似たような話で、基本的にはデプロイ時間を比較して、回生量は多いのではないかと見ています。トルコでいうと、予選Q3ではホンダのデプロイ切れが早くなりました。eブーストをちょっと多めに使うとそうなりますが、発電量で負けているわけではないというのが我々の分析です」
「ミスをしてデプロイ切れをすると予選順位に大きく影響しますが、使い切った場合は、ドライバーにしたら違和感があるかもしれませんが、(順位には)それほど関係ありません。自分たちで何をやっているのかわかっているので、そういうところも修正しています。ただし相手が何をやっているのかはわからないので、それも予測の範囲は超えません」
またこれに伴い燃焼モードも今までのコンセプトとは変わっており、たとえばターボに関してはホンダジェットの高いシミュレーション技術が活かされている。燃料についても「これまでの限界を乗り越えよう」と、必要な成分をホンダが調達し、それを規則に合うようにエクソンモービルがブレンドしてレースに使っているとのこと。まさに“オールホンダ”で戦っているのが現状だ。
浅木氏によれば、これらは将来を見据えて行ってきたことであり、理論的にはカーボンニュートラルが可能な燃料を使ってレースを行い、サーキットという場を使った実証実験で世の中の役に立てないかと考えてのものだという。それを証明する前にF1撤退が決まってしまったことが、いっそう悔やまれる。
2021年シーズンも残り6戦と、両選手権の制覇を目指すレッドブルとホンダにとって佳境を迎えている。オールホンダ体制で戦う最終年、悲願のタイトルに期待したい。



