ニキータは予選Q1でミックと同じタイミングで2セット目のソフトを投入しましたが、ここでもターン1でミスをしてしまいました。これでタイヤの温度も下がってしまったので、セッションの最後に一番いい状態のタイヤを履いて走るためにもニキータをピットに入れることにしました。
まだ雨は降っているものの基本的にコンディションは悪化していなかったので、2周アタックできるだけのガソリンを積んでコースに出しました。1回目のアタックで再度ミスがありましたが、なんとか2回目のアタックでようやくタイムを出せました。しかし2ラン目にタイムを出せていない影響は大きく、ミックから大きく3秒遅れて最下位に終わりました。

一方レースでは、中盤にルイス・ハミルトン(メルセデス)の前を横切るような形で接触しかけるシーンがありました。ニキータはミラーが汚れていてハミルトンのことが見えていなかったと話していましたが、見えないからこそ無線で様々な情報を伝えています。実は今回ニキータのレースエンジニアが現場に来れなかったので、僕が通常のエンジニアリングディレクターの業務と彼のレースエンジニアを掛け持って担当していました。ハミルトンとはスピード差もありますし、いろいろなことを伝えていたのですが、それをうまく処理できていなかったです。
また、レース中はどこかでドライタイヤに履き替えるタイミングが来ると当初は予想していたので、その時までできるだけインターミディエイトタイヤを長く保たせて走ることが重要だと踏んでいました。大して雨は降っていなかったので路面の水量も少ないなか、水のあるところを走るように指示を出し、具体的に水の残っている箇所も教えたのですが、それでもニキータはうまく水を拾って走ることができませんでした。

ミックですが、彼はアロンソと2周目に接触した結果、19番手まで順位を落としてしまったので、その後ニキータに詰まってしまいました。ニキータが35周目にタイヤ交換に入った後、前が空いのでこれを活かそうと思い、そのまま数週走らせました。ここでタイムを稼いだことで39周目にピットインした時には逆転に成功しニキータの前でコースに戻りました。
今回のように路面がある程度乾いたところで新品のインターミディエイトを履くと、すぐにオーバーヒートして、ゴムのブロックが動いてしまいタイムは落ちますが、そのまま走り続けることでタイヤが少し磨耗し、温度も下がってパフォーマンスは改善されます。ミックも最初こそ少しタイムが落ちましたが、そこから盛り返し、終盤はなかなかいいタイムで走れましたね。
ちなみにふたりの1セット目のタイヤはかなり磨耗していて、特にミックのタイヤは完全に限界でした。タイヤの一部はゴムの下の構造が見えていて、もしコース上の砂利などを踏んだ場合はパンクしてしまうくらいギリギリの状態でした。今回エステバン・オコン(アルピーヌ)がタイヤを交換せずに走りきりましたが、レース後のオコンのタイヤも右フロントタイヤの内側に同じような症状(もちろん、ミックのものよりかなり悪かったです)が出ていたので、彼はかなり危ない状況だったと思います。
