更新日: 2021.12.28 17:53
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第20回後編】孤軍奮闘のミックが見せた納得のレース。成長が見えたルーキーシーズン
ドライバーふたりのルーキーシーズンを終えたところで、彼らの1年を振り返ってみます。まずニキータですが、このコラムで何度も書いた通り、彼は決して能力のないドライバーではないし、速さもあります。クルマに乗っている時の感覚やフィードバックも悪くないのですが、1年通してその長所を発揮し続けられなかったのが反省点です。ブラジルGPでは非常によくやってくれたのですが、それ以前とそれ以降は安定しませんでした。
もちろん彼に対する外野からの声などもあると思いますが、ニキータに改善してほしいと思って僕からも時には率直にいろいろなことを伝えてきました。2年目となる来季は、とにかく仕事に集中してもっとコンスタントに走ってもらいたいです。
ミックはシーズン開幕前に「うまくいった時に褒めなくていい、修正点だけ教えてほしい」と言っていたのですが、シーズン後半にはそういうことを言わなくなりました。思った以上にF1は厳しいということに気づいたのでしょうね。もちろんミックがいい仕事をした時には僕らは褒めるべきですし、彼が弱みを見せたりリラックスできる関係性を築くことができたのではないでしょうか。
オランダGPやイタリアGPでニキータと接触した時はギュンター(・シュタイナー/チーム代表)にも様々なことを言われて落ち込んでいた時もありました。そこからよく盛り返してきましたね。悪いだけじゃなくて何がよかったのかも知るべきですし、彼もきちんと人に言われたことを聞くことができるので、成長が見られました。
そしてチームとして取り組んでいる組織づくりも、いろいろなことが前に進んでいます。エアロ部門もデザイン部門も今年の初めからスタッフを変えて、新しく採用もしています。それに以前実習でハースに来ていた大学生たちが卒業後チームに正式に所属してくれたりもして、若い人たちがいい仕事をしてくれています。オフィスの雰囲気も以前より明るいし、今の状況を表すなら“希望の芽がたくさんある”という言葉がぴったりです!
この2年はクルマの性能に希望が持てないシーズンでした。2022年のクルマが突然表彰台争いをできるように速くなるということはないけれど、少なくとも他チームと戦えるクルマにはなると思います。みんなが一生懸命開発を続けてくれているクルマを走らせることが待ち遠しいです。今までとは違ってコミュニケーションもよく取れてきているし、思った通りとまでは言いませんが開発もアグレッシブなスケジュールで進んでいます。やることは山積みで、完璧には程遠いですが、とにかく楽しみです。
最後に今年1年、ハースとしては創立以来の厳しいシーズンとなりました。わかってはいたものの、毎回ポイントを獲れる可能性がゼロに近いレースをしに行くのは大変でした。そのなかでも「いつどんな状況でもベストを尽くす、諦めない、何か自分にできることを見つけて半歩でも前に出る」という姿勢だけは崩さずに、ずっとやってきました。物事がうまくいっている時って、ある意味簡単なんです。厳しい状況でこそ、その人、そのグループの真価が問われると思っています。そのなかで個人としてもチームとしても成長できたと感じています。こうして培ってきたものすべてを2022年にぶつけようと楽しみにしているので、どうかこれからも応援ヨロシクお願いします! 皆様も良いお年を!