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投稿日: 2022.03.17 19:10
更新日: 2022.03.17 19:19

【中野信治のF1分析/開幕戦プレビュー】2022年マシンの難しさと見どころ。最大限の期待をしたい2年目の角田裕毅の成長


F1 | 【中野信治のF1分析/開幕戦プレビュー】2022年マシンの難しさと見どころ。最大限の期待をしたい2年目の角田裕毅の成長

 また、2022年シーズンは昨年までFIAのレースディレクターを努めていたマイケル・マシが交代することになりました。昨年の最終戦のセーフティカーの件でマシがああいった形で実質的な更迭となってしまいましたが、『じゃあマシがいて本当にF1界がネガティブな方向に行ったか』というとそうではないと思います。マシはあくまでF1という大きな組織のなかのひとりであり、顔みたいな存在でした。その部分を背後で動かしているのはもっと大きな力だと思います。

 個人的にはマシは本当に頑張っていましたし、本当に多大なプレッシャーがかかるポジションですので、更迭に関してはちょっと残念だなという気持ちがあります。やはりメルセデス・チーム、その周辺の関係者がシーズンオフの期間中にいろいろな政治的な動きをしていたのだと思います。あのファイナルラップでタイトルを逃したメルセデスの立場になればその気持ちも分かります。

 今のF1は本当の意味で大きな変化のタイミングだと思います。クルマが変わった部分以外のところで、社会的な部分でも大きな変化をしているすごく大事なタイミングです。メルセデスとしてもF1という戦う場所があってのメルセデスF1チームで、戦う場所を失ってしまうわけにはいかない状況のなかで、F1界全体として今後も成長していかなければならないという大きな使命があります。2021年のF1はそういったいろいろな思惑が見えたシーズンで、その最前線に立たされてしまったのがマイケル・マシという存在なので、正直見ていてすごく辛かったです。

 2022年はレースディレクターを交代制で行うということですが、レースディレクターを変えたところでやるべきことは大体は決まっています。責任をひとりだけが被るのではなく3人で分散させることが目的のような気もするので、おそらく基本的な考え方というのは変わらないと思います。まずF1がどこに向かっているかが第一にあり、F1はやはりスポーツであるというところを大切にしながらレギュレーションを守り、それと同時に、いかにF1を面白く、見る側が興奮するような魅力を感じてもらえるかをせめぎ合いになっていくことになるでしょうね。

 最後になりますが、F1参戦2年目を迎える角田裕毅(アルファタウリ)選手については今年、大いに期待していいと思っています。昨年は開幕時の好調から難しい状況になってしまう時期もありましたが、今年はマックスで期待していいと思います。レースの結果で表彰台に立ったり勝つ可能性があることはもちろんですが、現実的にはチームメイトのピエール・ガスリーに対してどれくらいのレースができるかというところがまず第一だと思います。

 その対ガスリーの部分でも、見ている側としても期待して良いと思います。もちろん、戦える準備としてメンタルの部分などはF1の世界でまだ2年目なので、そこは完全に理解ができているわけではないと思いますが、昨シーズンはかなりいろいろなことが起こり、角田選手自身も葛藤しながら本当にたくさんのことを学んだ1年だったと思います。その学びが最終戦のアブダビGPの4位の結果につながったと思いますし、その流れが今の開幕前テストでの順調さだと思います。

 開幕戦からのレースに向けてテストも落ちついてこなしていて、昨年とはアプローチの仕方が変わってきているなという感じはします。シーズンオフの時間もトレーニングに費やしているところも、自分が結果を出すためには何が足りなくて、何が必要なのかということを冷静に判断している感じがします。

 トレーニングや食生活などで意識が変わっていくというのはすごく大きなことです。角田選手はもともとマシンを速く走らせる能力に関してはあるので、学ばなければならないところはその部分でした。そこに関しては、多くのドライバーがF1参戦が終わってから気づくことが結構あります。ですので、F1で戦っている真っ最中に先に動いていくことが非常に重要になります。早く気づいて早く動き始め、それを実行に移している今の角田選手への期待というのは、大げさかもしれないですが開幕から最大限に期待していいと思います。

 クルマさえうまく決まれば昨年の最終戦の走りを見ていれば表彰台に上がれない理由はないので、条件さえ整えば開幕戦から表彰台に上がることができるはずです。ですが、そうなったときに昨年の前半にあったような、ちょっとした心の隙間みたいなものができて、ネガティブな波に飲み込まれないようにきちんと自分をコントロールできれば大いに期待できるという風に思います。

 テストでの動きを見る限り、アルファタウリのマシンもかなり良い感じに仕上がっているように見えました。蓋を開けてみなければ分からない部分もありますがロングランで順調に周回を重ねていましたし、周回数が多い中でトラブルフリーで走行できていました。集中してロングランをしていたので、レースに向けたいいテストができているはずなので、チームも本人もパフォーマンスに関してはある程度の自信があると思います。テストの進め方、内容の部分に関してもアルファタウリの落ち着きといいますか、自信みたいなものを感じたので開幕戦から期待したいです。

フランツ・トスト代表&角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1バーレーンテスト3日目 フランツ・トスト代表&角田裕毅(アルファタウリ)

<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24


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