更新日: 2017.01.03 13:07
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■拙速な変更でなく、抜本的な改革プランの検討を
2017年の空力レギュレーションの大幅な変更が、狙いどおりの効果をもたらさなかったとしても、F1のボスたちは思慮に欠ける拙速な反応をしてはならない。
メルセデスの元チーム代表、ロス・ブラウンは、F1の抱える諸問題に対して長期的な計画をもって取り組まず、即効的な解決を探すことにばかり熱を上げすぎていると、警鐘を鳴らしている。彼は近著「Total competition: Lessons in strategy from Formula 1」で、それを「短期的な答えなどない問題に、短期的な答えを求めている」と表現した。
新たなオーナーがF1を運営していくことが決まり、現在の各チームとの二者間協定が2020年で期限切れを迎えることを考えると、2021年に向けて今から抜本的な改革のプランを考えていくのが、賢明なやり方ではなかろうか。
4年と少しの年月など、それこそあっという間にすぎてしまうだろう。それでも、どうすればレースが面白くなるか、F1をよく知る人々の洞察力を用いながら慎重に考え、アイデアのテストと解析を行っていくには、4年もあれば十分だ。
2016年初めに取り入れて、わずか2戦で廃止されたあの予選フォーマットの変更のように、一時の思いつきでルールを変えるのは最悪のやり方だ。また、現在の新しいエンジン規定を決めるにあたっては、コスト制限が不十分という問題があったが、ルール変更は熟慮を重ねた末に行わなければ、また同じ轍を踏んで新たな問題を生み出すだけだ。
F1は、10秒間の瞬発力を競う100m走のような激しさでレースをすることはできないし、そのように設計されてもいない。むしろ、グランプリは「ローストディナー」(注:ローストした肉、ジャガイモ、ヨークシャー・プディング、詰め物料理、野菜とグレイビーソースからなるイギリスの伝統的な食事で、日曜の昼食に供される)のようなものかもしれない。
毎日食べるわけではないし、準備にはある程度の時間がかかる。肉が見事にやわらかく、ポテトはサクサクに仕上がり、付け合せの野菜も上出来なら、大いに満足できるだろう。
時には肉が上手に焼けなかったり、ポテトがイマイチだったりするかもしれないが、それでも翌週にはまた同じ料理を用意する。それと同様に、F1も当座の好不調と成績はどうあれ、シーズンの終わりまでレースを続けるしかない。
短時間で勝負がつくレースは、人気を呼ぶ甘いお菓子にはなるだろう。だが、それはあくまでメインコースの添えものにすぎないのだ。
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