更新日: 2017.01.05 15:34
2017新春F1覆面座談会(1)ワールドチャンピオンの去り際は、あれで正しかったのか?
──もう一度ロズベルグに話を戻して、結局のところ、彼の引退という決断は正しかったのか?
A氏「もしチャンピオンを逃していたら、2017年も続けただろうね。ただ、次のシーズンでハミルトンに勝てるかというと……」
C氏「勝てないでしょ!(笑)。まあ、フォトグラファーとしては、ロズベルグは撮りやすいドライバーだから続けてほしかったな。ロズベルグはガレージに居るときもモニターを前に置かないことが多いし、スタート前のグリッドでもハミルトンのようにカメラを避けないから、撮りやすいんだよね。そういう意味では、(フェリペ)マッサも撮りやすく貴重な存在だった」
A氏「(ダニエル)リカルドもヘルメットを脱いでコクピットに座っていることが多くて撮りやすそうだね」
C氏「そう。だからフォトグラファーとしてはありがたい。ジャーナリストはよく『ロズベルグのコメントはつまらない』と言っているけど、写真を撮る立場としてはパドック裏でもよく立ち話をしていたり、撮りやすい存在だったんだ。ルックスも良いしね」
A氏「優等生的なコメントもそうだけど、振り返ってみて、彼の『これぞロズベルグだ!』というような1レースを挙げるのが難しい。ハミルトンと接触したり、押し出されたりというシーンはすぐ浮かぶんだが……(笑)。強いて言えば、ハミルトンの戦術に耐えに耐えてチャンピオンを獲得したアブダビがベストレースだろう」
C氏「あれも耐えたというよりは、私には単にリスクを避けて抜きに行けなかったように見えたが……」
A氏「まあまあ、最初で最後のチャンピオン獲得なんだから祝福してあげようよ!(笑)」
B氏「ロズベルグについて振り返ると、ここ数年メルセデス同士でタイトル争いが繰り広げられたから、メルセデスの記者会見ではロズベルグにイギリス人記者が質問するケースが少なくなかった。イギリス人記者の中には、故意に挑発させる質問をしてネタにするケースがあるけど、ロズベルグはその挑発に絶対に乗らなかった。しかも、ロズベルグは挑発に乗らないどころか、うまく切り替えして、その場を和ませる技を持っていた。たしかに本音を語らないという面では面白味に欠けるところはあったけど、そういう点も含めると十分ネタになるドライバーだったと思う。逆に挑発に乗ったのがスマホ問題が起きた日本GPのハミルトン」
C氏「ロズベルグに関してもうひとつ言えば、あの引退劇を『潔くてかっこいい』という意見もあるが、個人的にはディフェンディング・チャンピオンとしてレースをする姿をファンの前で一度も見せずに去るのは、これまで応援し続けたファンに対して失礼だと思う。せめてもう1年走って、世界中のファンに勇姿を見せた後、『僕はやっぱりハミルトンには勝てません』と言って引退する方がよっぽど潔い(笑)」
A氏「まあ、ロズベルグ寄りの意見を言わせてもらうと、タイトルを獲った時点で彼は燃え尽きてしまったんだろう。あと1年、またハミルトンとやり合わないといけないというのは、もう精神的に無理だったのだと思う」
C氏「ハミルトンと自分との“越えられない壁”も嫌というほど味わっただろうしね。とは言え、彼にはファンの気持ち考えてほしかった。でも、燃え尽きたという意味では、父がF1ワールドチャンピオンで、何不自由なく育ってきたロズベルグにはハミルトンと何年もタイトル争いをするプレッシャーに耐えきれなかったのだろう」
B氏「そもそも、僕はなぜメルセデスがロズベルグの引退を許したのかが疑問。この契約不履行によってメルセデスが被る被害は結構大きいからね」
A氏「リカルド・チェカレッリというイタリア人のF1ドクターは、幼少期から何不自由なくレース活動をしてきて、ワールドチャンピオンになった男はアイルトン・セナ以外にいないと過去に言っていた。同じ親子2代チャンピオンでも、デーモン・ヒルは父のグラハムが飛行機事故で亡くなって保険で未加入だったから同乗者への保証金の支払いでデーモンは貧しい生活を強いられた。ロズベルグの2代制覇とは環境ががまったく違うんだよね。これまでのチャンピオンはベッテルだって、ミハエル・シューマッハーだって裕福な家庭環境ではなかった。シューマッハーはカート時代に(ハインツ-ハラルド)フレンツェンが使ったタイヤをゴミ箱から奪って使っていたという逸話があるくらい。だから、ロズベルグのようにお坊ちゃん育ちでチャンピオンになるというのは精神的に本当に大変なことなんだろう」
C氏「大変という言い方もできるし、ものすごく恵まれている男だとも言えるがね。チャンピオンを穫れたことを祝福したい気持ちと、最後にお坊ちゃまらしさを見せて辞めていったというふたつの感情があるが、まあ外野の声はともかく、彼にとっては引退が最良の選択だったんだろう」
A氏「でも、この引退で2017年は面白くなって良いんじゃない? 多くのドライバーにチャンスが生まれるし、結局、マッサも復帰しそうだしね」
──パート1はいったんこれまで。次回はロズベルグ後任問題を発端に、マクラーレン・ホンダにも飛び火した辛口トークが展開。パート2もお楽しみに。