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投稿日: 2022.05.01 12:54
更新日: 2022.05.01 13:06

【中野信治のF1分析/第4戦】低迷する7冠王者ハミルトンの苦悩。躍進角田の転換点とフェラーリの契約更新の目論み


F1 | 【中野信治のF1分析/第4戦】低迷する7冠王者ハミルトンの苦悩。躍進角田の転換点とフェラーリの契約更新の目論み

 雨上がりとなった決勝レースですが、当然、コース上でのオーバーテイクは難しい状況になりました。イモラ・サーキットはもともとコース幅が狭くてラインがただでさえ少ないのに、さらに雨上がりということで乾き始めているラインが1本しかなく、オーバーテイクはほぼターン2〜3でしかチャンスがありませんでした。最終コーナーから本当にピタッと前車の後ろについていかないと追い抜くことができない状況でした。イモラ・サーキットは微妙に直線が短くて長さが足りないので、抜けそうで抜けないサーキットです。

 さらにウエットからドライコンディションに変わるタイミングで早めにピットに入ったマシンのアドバンテージがすごく大きかったのもレースの大きなポイントになりました。タイヤウォーマーの温度が今年は70度に下げられているので、アウトラップが難しくなります。そういったことを含めて、路面が乾きはじめた状況で、『なんでピットに入らないの?』ということを見ている方は思いますが、実際にドライブしているドライバー、そしてチームを含めても判断は非常に難しいです。

 ただ、あの場面で気になったのは、後方に沈んでいたハミルトンが早めにピットに入らなかったことです。チームにピットのことについて聞かれ『まだ早い』とハミルトンは無線で返答していて、その無線が実際にはどのタイミングのものかは分かりませんが、少しハミルトンが守りに入っている雰囲気に見えました。後方から順位を上げるためには多少のリスクを冒すしかありませんでしたが、あの場面でピットに入らなかったのはどうだったのかなと思いますね。

 今回のハミルトンはすべてにおいてリスクを冒さない選択をしているように感じましたが、それはイコール、クルマへの自信がないということでもあります。難しい状況になったときにクルマをコントロールしてでも、何とか押さえつけて走るんだという自信が今のハミルトンにはないのでしょう。それに対してラッセルは素晴らしい走りを見せていたので、余計にハミルトンの難しい状況が目立ってしまいました。

【動画】2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGP ハイライト

 そしてレース終盤にはシャルル・ルクレール(フェラーリ)もターン15の出口でスピンをしてウォールに少しヒットしてしまいました。ルクレールは3番手を走行していて、2番手のセルジオ・ペレス(レッドブル)を抜けなくてイライラしていた状況のなか、タイヤをソフトに交換しましたが、ソフトタイヤのフィーリングがルクレール的にしっくりと来なかったので、無線で『ミディアムの方が良かった』ということを言っていました。

 実際にミディアムタイヤを履いたところでペースが上がるかと言うと決してそうではないと思いますが、僕はその無線を聞いたときにルクレールが少し焦っていることを感じました。ターン14〜15の縁石にはまた一段高くなってる縁石がありますが、僕も走ったことがあるので分かりますが、あのコーナーには登って下って進入するのでドライバーからはイン側の縁石が見えません。ドライバー目線だと本当に黄色の縁石のてっぺんが少し見えているだけなので、縁石へのクルマの乗せ具合がすごく難しい。ですが、ターン14〜15はできるだけ縁石をカットしていった方が速い。そのあたりの判断、焦り、集中力が乱れた結果のルクレールのスピンでした。

 チャンピオン争いをするというのはそういったプレッシャーのなかで戦い続けることで、良いときほど確実にポイントを獲りに行かなければなりません。好調のフェラーリにとって地元のイモラは落とせない、勝って当たり前という雰囲気になっていたので、ルクレール的には3位は許されないという状況でした。そこで焦りが出てしまい、普段だったら絶対起こさないミスを犯してしまいました。

 奇しくもあのコーナーは昨年のイモラの予選で角田裕毅(アルファタウリ)がクラッシュしたコーナーでもあります。少しでも速度や角度が違っただけでルクレールや角田のようになってしまう、本当に難しいコーナーです。

 その角田ですが、今回の走り出しを見ると厳しい週末になるかなと感じましたが、走るたびに調子を上げてきました。本当に確実に、ベテランドライバーかというくらい、昨年までの角田とは本当に別人のように淡々と仕事をこなしている状況が見えました。細かいミスはしているかもしれませんが、外から見ている限りでは本当にミスを犯さずに自分がやるべきこと、チームが望むことをきちんとこなしながら、自分のレベルを引き上げていくという作業をレースウイークに入ってからきっちりと進め、レースでは昨年までの課題だったスタートをきっちりと決めるという、自分のミスが多かった部分をすべてクリアにしていきました。

角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGP 角田裕毅(アルファタウリ)

●イモラ前で契約更新したサインツとフェラーリの目論み


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