Shinji Nakano まとめ:autosport web

 展開としてはチームメイトのピエール・ガスリーとこれまでの立場が逆転しているようでしたね。ガスリーも決して悪い走りをしているわけではなかったですし、最後までハミルトンを抑えきったレースは素晴らしかったです。ただ、流れが角田にあるというのが実際のところで、今回に関しては全セッションで角田がガスリーを上回っていたので、どういったコンディションでもコンマ1秒でもガスリーの前に居続けるという、昨年の最終戦アブダビGPと同じ展開でした。

 チームメイトのガスリーにとっては、このような展開は本当にボディブローのように自分に効いてきます。何をしても勝てない、全力で走っているのに勝てないということになると、どんどんとガスリーにプレッシャーがかかってきます。そうなると流れが一気に変わってきます。

 決勝でもタイヤをそこまで守っているわけではないはずですが、後ろから迫られたときも決して無理せずにタイヤを労りながらきちんと走れていました。それが結果として、レースの後半は3位のランド・ノリス(マクラーレン)と遜色のない、時より速いペースを見せていました。ああいった走りを見ると、ピタッとクルマが合ったタイミングが来れば本当に表彰台が見えてくる期待を持たせてくれたレースでした。今回は決勝だけではなくレースウイークを通して角田の良いところが出ました。

 次戦のマイアミGPは全ドライバーが未経験ということで角田にとってはチャンスかもしれません。ストリートサーキットでまたコース特性も全然違うでしょうし、それがどういった結果を各チームにもたらすかは今の段階ではまったく読めません。チームメイト争いも含めて面白い戦いが見られるかもしれません。角田とガスリー、ハミルトンとラッセル、ルクレールとカルロス・サインツの争いですが、このイモラの前のタイミングでフェラーリがサインツと契約を延長したのも見逃せません。

 これは暗にルクレールにチャンピオンを獲らせるから『サインツは大人しく走ってね』という暗黙の了解だと思います。サインツは今年、不運のアクシデントなどいろいろなアクシデントが起きていますが、焦ってうまくいかないことが続くと無理をしてルクレールをやっつけて勝ちに来ようとします。それはフェラーリにとってあまりうれしくないことです。

 もちろんサインツは決して遅いわけではないですが、フェラーリとしては今年は絶対にチャンピオンが欲しいのでポイントは取りこぼしたくないはずです。チームメイト同士でぶつかってポイントを逃すという万が一のことも防ぎたいので、サインツとの契約を早くに決めてしまったのだと僕は読みます。対するレッドブルはペレスがそういった意味では完璧な仕事をしているので、フェラーリがレッドブルに勝つにはチームメイト同士で争わずに着実にポイントを獲得していくことが今後重要になっていきます。

2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGP カルロス・サインツ(フェラーリ)がアクシデントでリタイア
2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGP カルロス・サインツ(フェラーリ)がアクシデントでリタイア

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<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24

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