更新日: 2022.06.10 12:57
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第7回後編】無理な追い抜きに大クラッシュ。プレッシャーのかかる状況でもがくミック
ケビンのレースを振り返っていこうと思います。スタートはフルウエットタイヤでしたが、路面が乾き始めていたので、1台はインターミディエイトタイヤに交換しようと考えていました(最初にインターに履き替えたピエール・ガスリーのタイムがよかったので、それも参考に)。後ろにいたミックを先にピットに入れてインターに交換し、ケビンはそのまま走り続けました。
ガスリーは周冠宇(アルファロメオ)、ダニエル・リカルド(マクラーレン)などを抜いて瞬く間にケビンに追いついて、ピットストップのロスをを取り返していました。このままだとケビンも追い抜かれるかもしれないと思っていたのですが、よくディフェンスしてくれましたね。18周目にはドライタイヤに交換できそうだと伝えてくれたのですが、このタイミングだとトラフィックの後ろでコースに戻ることになるので、もう少し後ろの状況を見てからピットに呼ぼうと考えていました。
ですがその前にMGU-Kのトラブルが発生し、ケビンから「パワーがなくなった」と報告があり、フェラーリのスタッフも「MGU-Kの冷却水の圧力がなくなった」と。結局どうにも解決できずリタイアとなりました。モナコなので追い抜くことはできなかったものの、ケビンは前を走っていたバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)に余裕でついていけており、ドライタイヤへの交換のタイミングで抜こうとしていたところだったので非常に残念です。
ちなみにミックはインターに交換した後、最初は悪くなかったのですが、前にいたベッテルに途中からついていけなくなりました。今年のクルマでモナコを走ってアストンマーティンより遅いとは思わないので、このインターでのタイムは反省点です。タラレバですが、もしここでベッテルについていくことができていれば、フルウエットからドライに履き替えたアルボンはミックの後ろでコースに戻っていて、接触することもなかったはずでした。
僕のなかでは、この3レースは獲るべきところでポイントを獲れていないのでとてもフラストレーションが溜まります。マイアミはダブル入賞のはずでしたし、スペインはケビンのスタート直後の接触がなければ入賞は可能でした。VF-22にはトップ10に入れる速さがあるので、ケビンはこの3戦で、そしてミックは少なくともマイアミでポイントを獲るべきでした。コンストラクターズ選手権でも他チームとの差が広がってしまっています。
ただこの週末の明るい材料としては、シミュレーショングループやビークルパフォーマンスグループ、タイヤグループなどがレース週末の前に行う準備の結果がよかったことです。それを反映させた持ち込みのセットアップはよかったですし、彼らのサポートのお陰でFP1からFP2にかけてのセットアップ変更や金曜の夜の変更もうまくいきました。ケビンも「どんどんクルマがよくなっている」と言っていました。
もちろんモナコは路面の改善が早く変化も大きいし、ドライバーもそれに慣れていくので、『慣れ』と『路面の変化』と『セットアップ変更』のどれが一番効いたかというのはわかりづらいですが、今持っているものでベストを出すという点ではチームはよくやってくれたと思います。前回のコラムで書いた通り、マイアミで投入したアップグレードは大きなものではありませんでしたが、最大限に実力を引き出せていると評価しています。