Ayao Komatsu

 上述の通りダブル入賞で決勝レースを終えましたが、ケビンの方はかなり危ない状態でした。エンジン系の問題がレース中盤から出始めて、アクセルを踏んだ時に安定してパワーが出なくなりました。この症状がランダムに出るのでラップタイムにも影響しました。この辺りでミックの方がペースがよかったので、ふたりの順位を入れ替えようと思っていたら、こちらから指示を出す前にケビンが自分の意思でミックに順位を譲ってくれました。ケビンがこうしてミックを先行させたのは、オーストラリアGPに続いて2度目のことです。

 ケビンはその後もラップタイムが悪くて、ランド・ノリス(マクラーレン)にプレッシャーをかけられ41周目に2度目のピットイン。ここで失敗したのは、ケビンよりも後ろにいたジョージ・ラッセル(メルセデス)をカバーできなかったことです。この時僕たちはメルセデスの無線を聞いていて、ラッセルが40周目にピットに入ることは予測していました。結果的に僕らは40周目には動かず、次の周にピットインしたのでラッセルにアンダーカットされてしまいました。その2周後にピットインしたノリスにオーバーカットされることはなかったものの、ケビンは第3スティントでもやはりペースが上がらずVSC後に抜かれてしまいました。それでもエンジンの問題を抱えながら8位でフィニッシュできたことは評価されるべきだと思います。

ケビン・マグヌッセン(ハース)&ランド・ノリス(マクラーレン)
2022年F1第11戦オーストリアGP ケビン・マグヌッセン(ハース)&ランド・ノリス(マクラーレン)

 一方のミックはレース前に、スプリントで順位を入れ替えられなかったことをまだ自分の中で消化しきれておらず、再び話し合いの場をもちました。とにかく無駄な争いをしてお互いの足を引っ張ることだけは避けるようにと伝えました。彼は100%納得したわけではないものの、結局この指示に従って走ってくれました。第2スティント中盤でケビンの前に出た後はいいペースで、前にいたエステバン・オコン(アルピーヌ)とのギャップも安定していてほぼ同じペースでした。ただ43周目の2度目のピットストップの際に3.6秒かかってしまい、コースに戻った後他車に詰まってラッセルとの差が開いてしまいました。

 ですからオーストリアGPは結果こそよかったものの、チームとしてもう少しうまくやれたな、という反省点も多いレースでした。それでも中団勢のなかでアルピーヌに次ぐ2番手という位置で終わることができたのは、クルマのセッティングがよかったことと、マイアミでの小さなアップデートが機能していることが理由だと思います。以前のコラムにも書いた通り、マイアミで投入したのは大きなものではないのですが、それのおかげでセットアップの幅が広がったことは確実です。今回は持ち込みのセットアップも非常によかったので、そういうもののコンビネーションでいい結果に繋がりました。

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第11戦オーストリアGP ミック・シューマッハー(ハース)

 ただ、どこのサーキットに行っても今回のように最初からいいペースで走れるかというと、チームとしてはまだその段階には到達していません。イギリスGP金曜日のケビンがそのいい例です。この時は持ち込みセットアップがよくなかったので高速でまったく安定しなかったのです。もっと安定して良いセットアップをどこのサーキットでも持っていけるようにならなければいけません。

 また当初は次戦フランスGPで新しいアップデートをする計画でしたが、現在はその次のハンガリーでの投入を予定しています。というのも、GOサインを出す前の最後の風洞セッションで結果があまりよくなかったので、再確認が必要になり遅れが出てしまったのです。ファクトリーのシャットダウン(サマーブレイク)後まで用意できないという話もあったのですが、ハンガロリンクのように低速コーナーが多いサーキットでのゲインが大きいので、なんとか1台だけでも持ち込もうと急ピッチで作業しているところです。

小松礼雄エンジニアリングディレクター&ケビン・マグヌッセン(ハース)
2022年F1第11戦オーストリアGP 小松礼雄エンジニアリングディレクター&ケビン・マグヌッセン(ハース)
小松礼雄エンジニアリングディレクター&ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第11戦オーストリアGP 小松礼雄エンジニアリングディレクター&ミック・シューマッハー(ハース)

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