決勝レースはふたりともミディアムタイヤでスタートすることにしました。ポール・リカールはそれほどセーフティカー(SC)が出る確率の高いサーキットでもないですし、ミックのミスとケビンのペナルティで、スタート位置はクルマの速さにまったく見合っていない順位です。ですからなんとかミディアムで序盤にアタックをかけて順位を上げられるだけ上げて、その後どこで前のクルマに詰まるか、またタイヤのタレ具合を見て、1ストップにするか2ストップにするのかを決めようと思っていました。
ケビンは予想以上にいいスタートを切って、一気に12番手までポジションを上げてくれました。ミックもすぐ後ろで14番手と狙い通りのオープニングラップとなりました。その後、ケビンはセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)の後ろ、ミックはアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)の後ろでスタックしてしまったので、クルマの速さを活かして1ストップ勢を逆転すべく、2ストップのタイミングでピットインしてフリーな状態で走らせました。この時も狙い通りの速さで走ってくれたので、この時点ではすべてがうまくいっていました。

しかし18周目にシャルル・ルクレール(フェラーリ)がターン11でクラッシュし、SCが出たことですべてが変わってしまいました。この時点で残り周回数は35周だったので、1ストップ勢にピッタリのタイミングです。これではウチはどうしようもありません。ここから最後まで走り切るため、やむを得ずこの段階で2度目のストップを行いました。これでケビンは18番手まで順位を下げることになります。
レース再開後はペースもよくて、10番手のランス・ストロール(アストンマーティン)から5秒以内につけていたのでまだチャンスはありました。しかし残念ながら30周を過ぎたあたりからペースが落ち始め、前にいるバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)にアタックするよりも、一度は抜いたピエール・ガスリー(アルファタウリ)からプレッシャーを受けるようになりました。そのガスリーに抜かれた後、38周目にターン2進入でニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)と接触してフロントウイングやフロアにダメージを負ってしまいました。これでもうポイント圏内まで挽回できる可能性がなくなったので、新調したPUの距離を抑えるためにもリタイアすることにしました。
今年のフランスGPは開催時期が昨年より1カ月ほど遅く、路面温度が60度を超えておそらく過去最高温度になりました。ホントに暑かったですね。このせいで、ウチはリヤタイヤがきつかったです。特にミディアムのタレがひどかったので、レースはなるべくハードタイヤで周回を重ねたかったんです。これもあってウチは2ストップで行くことにあまり躊躇しませんでした。ガスリーのようにミディアムで35周は走れなかったですね。ケビンはバトルをしていたせいもありますが、ハードでもタレが大きかったです。逆にミックはうまくタイヤを持たせて走っており、特にレース終盤にVSCが出る前の数周はとてもいいペースでした。ですからミックも予選ではミスがあったもののレースではタイヤをうまく使って走れたので収穫はありました。夏休み前最後のハンガリーではぜひ、週末を通して上手くまとめてほしいと思います。


(第10回後編・ハンガリーGPに続く)