Luis Vasconcelos

 今シーズン半ば、スランプに陥っているように見えるもうひとりのドライバーは、ピエール・ガスリーだ。才能は問題ない。士気の低下が影響していると思われる。

 2021年に強力なシーズンを送ったガスリーは、今年、アルファタウリがさらに強さを増して、より上位で戦うことができるものと考えていた。それができれば2023年にレッドブルに復帰する道が開けるかもしれない、そう期待していたのだ。だが今のところ、彼の思惑はすべて外れている。シーズン序盤、セルジオ・ペレスが好結果を出し続けるなか、アルファタウリAT03のパフォーマンスはぱっとせず、結局レッドブルはペレスと複数年契約を結んでしまった。昇格の可能性が消失したために、ガスリーはレッドブルとの契約から逃れようとしたが失敗し、2023年もアルファタウリで走ることが確定した。

 今のガスリーはモチベーションが低下しているように見える。必死に頑張れば、14位ではなく11位になれるかもしれないが、それに何の意味がある、と考えているのだろう。リカルドと同様に、ガスリーも環境が変われば再び輝き出すはずだ。だが、その機会は、早くても2024年までは訪れない。

2022年F1第11戦オーストリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
2022年F1第11戦オーストリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ)

■チームの平穏を乱すマクラーレンCEOの行動

 スランプに見舞われるのはドライバーだけではない。チームもさまざまな理由で不調に陥ることがある。たとえば今年で言うと、なんといってもメルセデスだ。だが、メルセデスの不調の原因は比較的分かりやすい。今季マシンのコンセプトを間違ってしまったにすぎない、あるいは、彼らに言わせると、「今季マシンが持つポテンシャルを最大限引き出せずにいること」が原因だ。従って、彼らは2023年に向けて目標を修正し、再びトップに立つことは可能だろう。

 今年はマクラーレンも期待されたほどの強さを見せていない。彼らは2022年のレギュレーションをうまく解釈することができなかった。つまり、来季型には異なるコンセプトを採用すれば改善するのだろうが、マクラーレンにはもうひとつ問題がある。CEOザク・ブラウンの行動が、チーム内に不穏な空気をもたらしていることだ。アンドレアス・ザイドルは強力なリーダーなので、彼がチームをうまく守っていけるかどうかが今後の鍵になりそうだ。

 ブラウンはパト・オワード、コルトン・ハータ、アレックス・パロウ、オスカー・ピアストリと契約あるいは接近、それによって、チーム全員が混乱に陥っている。マクラーレンの場合、現在のパフォーマンス不足の責任の一端はCEOにあるといえるだろう。

マクラーレン・レーシングCEOザク・ブラウン
マクラーレン・レーシングCEOザク・ブラウン

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