更新日: 2022.08.15 17:13
【F1コラム】リカルド、ガスリーはなぜ不振に陥ってしまったのか。F1の世界で待ち受けるスランプへの入口
最後に、今後が懸念されるチームとしてアストンマーティンを挙げ、その現状に触れておきたい。
フォース・インディア時代までは小規模ながら、非常に効率の良いチームだった。その後、多額の予算、大規模なスポンサー、ビッグネームを手に入れ、元世界チャンピオンをドライバーとして迎え入れて、F1での成功を目指しているわけだが、その成長に伴う痛みが生じている。オーナーであるローレンス・ストロールが、他チームから人員を引き抜いて重要なポストに据え、シルバーストンのファクトリーで長年働いてきた人々を軽んじることで、長年育ててきた素晴らしいチームスピリットを台無しにしつつあるのだ。
いまや古参スタッフと新規参入メンバーの間に溝ができ、チーム内に“我々と彼ら”という空気が流れている。チーフテクニカルオフィサーのアンドリュー・グリーンがストロールの方針の次なる犠牲者となったとしても、私は驚かない。ストロールは、レッドブルから引き抜いてきたダン・ファローズをテクニカルディレクターに任命したが、彼をさらに上のポジションへと引き上げたいと思うかもしれない。ファローズは常勝チームであるレッドブルに所属していたという理由でだ。
グリーンは、アストンマーティンF1の基礎となる、1991年から活動を始めたジョーダン・グランプリの初期からのメンバーで、1998年末まで同チームにとどまり、他チームでのキャリアを経て、12年前に戻ってきた。彼がもし離脱するようなことになれば、同時に経験豊かな古くからのメンバーも抜けてしまい、チームが弱体化するかもしれない。
そしてさらなる不安要素は、来年にはセバスチャン・ベッテルに代わってフェルナンド・アロンソが加入することだ。アロンソはすぐさま結果を求め、チームに大きなプレッシャーをかけるだろう。そして、アロンソとストロール家の関係が悪化した場合には、チームは最悪の状況に陥る。
心の平和、調和、互いに信じあうことこそが、成功する企業の根幹の大きな部分を占める。レーシングチームであれば、その傾向はさらに強い。チームにとって重要なのは、集団的に経験を積み、前に進んでいくことなのだ。それができれば、結果はついてくる。それができなければ、どれだけ経験豊富で才能があるスタッフがいて、多額の資金をマシンにつぎ込むことができても、そのチームは失敗するだろう。