どうしてもトップ争いに話が集中してしまいますが、今回のイタリアGPで触れなければならないのが代役出場のニック・デ・フリース(ウイリアムズ)のパフォーマンスです。急きょ(虫垂炎で欠場した)アレクサンダー・アルボンの代役として参戦することになりましたが、予選から輝いていましたね。
チームメイトのニコラス・ラティフィと比較しても、初めてのF1予選とは思えないほど堂々たるものでした。1コーナーでミスがあってタイムを若干失っていましたけど、それ以外のコーナーは完璧にまとめ上げ、低速と高速コーナーの両方でラティフィを上回るスピードでした。特に最終のターン11(クルバ・アルボレート/旧パラボリカ)でのスピード感覚は『このドライバーが速いマシンに乗ったら間違いなく上のポジションに来るな』という期待を抱かせるドライビングでした。
ウイリアムズのクルマはもともとのダウンフォースがかなり少なく、コントロールが難しいマシンだと思います。ブレーキングもすごく難しく、コーナリングでのコントロールもすごく繊細なものを求められると思うので、基本的にはドライバーが乗り慣れていないと乗りこなせないクルマだと思います。
最近はアルボンが結構いい走りをしていましたけど、デ・フリースは初めての走行で同じレベルで走ることができていたと思います。ラティフィには申し訳ないですけど、アルボンとデ・フリースの2台だったらどんな走りをしてくれるのか、と思わせるパフォーマンスでした。おそらくアルボンと互角か、もしかしたらデ・フリースが上回るかもしれないという期待を抱かせるほどの走りでした。
レースに関してもデ・フリースは本当にノーミスで最後まで走り切りました。F1デビュー戦でのこの走りは本当に簡単なことではありません。テストとレースというのはまったく別モノで、53周/306.72kmのレースをミスなく走り切るということは相当大変なことですし、予選の一発アタックをまとめ切ることも、もちろん大変なことだと思います。
それを難なくこなしてしまうデ・フリースには才能と可能性を感じました。それと同時に、やはり若くて才能のあるドライバーにこういったチャンス、どんどんF1にステップアップしていける流れが、F1界にもう少し出てきてもいいのかなとは少し思いました。今回のデ・フリースのデビューに関してはいろいろな発見がありましたね。
また、角田裕毅(アルファタウリ)に関しても、この週末はチームメイトのピエール・ガスリーを上回るパフォーマンスを見せてくれました。予選ではグリッド降格が決まっていたことも影響してか、ガスリーに対してQ1のタイムは0.01秒遅れましたが(角田:1分22秒020、ガスリー:1分22秒010)、全体を見るとすごくいい走りをしていたので、ガスリーも少し焦っていたのではないかと思います。
決勝では後半に履いたハードタイヤでペースがうまくまとめられなかった部分が気になりましたが、そこはタイヤとクルマとの相性なのかもしれません。それ以外の部分、今回の裕毅の走りに関しては『F1で戦える』ということを十二分にアピールできていたので、やるべきことはやったなと思いました。

