Tomoki Nojiri まとめ:autosport web

 今回は3年ぶりに鈴鹿サーキットで開催されたF1日本GPになりました。そのサーキットに実際に来て、レースを見て感じたことは、本当にベストのイベントで、これ以上のレースがあるのかな、と思ったほどです。これは完全に選手目線なのですけど、この雰囲気のなか走れている20人のドライバーたちは、世界一すごい人たちだけど、世界一幸せな人たちなんだろうなということを感じましたね。

 そして日本人ドライバーの角田裕毅(アルファタウリ)は、僕にとってはSRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ/現在のホンダレーシングスクール鈴鹿)時代の教え子であり、何度か講師をしました。当時の彼の印象としては、まだまだ子供という感じで、スクールが終わるとサッカーをやっていたりしていて『もうちょっとレースのことを考えろ』みたいな感じはありました(笑)。

 ですが、当時から陰では結構レースと真面目に向き合ってたようです。周りからの話を聞くと、『(ルイス)ハミルトンはこうやって走っているから僕もこうやって走ろう』など、いろいろな選手のオンボード映像を見ていたようなので、そこから自分の走りのイメージをどんどんと作り上げていったのではないかなと思います。それに対して、僕たち先輩だったりSRS-Fの先生方がいろいろなアドバイスを付け加えるかたちだったので、表にはあまり見せないけれども、彼がかなりの努力家であることは間違いないと思います。

 やはりカートから四輪に上がりたての時期はみんな最初はしっかりとは走れないですし、タイムも出ません。彼の当時の走りの面では、正直SRS-Fのときはまだまだ初めての四輪のクルマを扱えているようなところまではいっていませんでした。特に一発のタイムをなかなか出すことができずに苦労していたかと思いますけど、それでも、ロングランになるとあまり(他の生徒と)変わらないペースで走り続けていたのを覚えています。ロングランではタイムも落ちず、ずっとそのタイムが維持されるので、ユーズドタイヤでの走行になると『いつのまにか角田が上の順位にいるな』ということがすごく多かった印象です。

 それこそ一昨年のFIA-F2で他のドライバーのタイヤがタレてしまっているなか、角田だけ好ペースというような状況がありましたし、今のF1でもそうなのかもしれないですけど、タイヤマネジメントがうまいといいますか、もしくはタイヤのグリップが落ちたときに、少ないグリップでもタイヤを感じ取る能力が長けているのか、そういったところが当時からあったのかなと思います。

 そんな角田の日本GPは、ピットに入るまではいい順位にいたかなと思います(ポイント圏内を走行していたが残り8周のところでチームの指示でタイヤ交換)。ただ、その後に順位を下げてしまっても、しっかりと前を追っていたと思いますし、この日本GPでファンの応援を手にして、最後までしっかりと強い気持ちを持って走っていたということは当然見て取れました(角田は結局13位)。

 こういったレースをきっかけに、どんどんと成長できるようなきっかけにもなると思います。僕は日本人の同じようなレーシングドライバーですけど、角田には本当にフェルスタッペンと同じような、そういった場所にたどり着くようになってほしいですね、今の角田は子どもたちにとって夢の選手だと思います。

2022年F1第18戦日本GP チームスタッフとコースウォークに向かう角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第18戦日本GP チームスタッフとコースウォークに向かう角田裕毅(アルファタウリ)

 そして、今回のF1を見て、本当にドライバーみんなが自分の持つすべてをかけて戦いに挑んでいるということが感じられたことが、選手としては一番の大きな収穫です。当たり前のことかもしれないですけど、今回の鈴鹿のF1を見て、『もっと僕はやれる』という勇気を貰いました。

 ドライバー全員が本当に死力を尽くしてといいますか、1周1周、もう自分には何もないくらい全力を出し切るということを、F1に携わる人たちは当たり前のようにやってのける人たちだなということを感じ、スーパーフォーミュラのチャンピオン争いに向けて、すごくいい刺激を貰いました。

2022年F1第18戦日本GP鈴鹿サーキット決勝日
F1日本GP後のスーパーフォーミュラ・トークショーには中嶋悟監督、野尻智紀、平川亮、上野禎久JRP社長が登壇

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●野尻智紀(のじりともき)
1989年生まれ、茨城県出身。カートで数々の実績を重ねた後、2008年にSRS-Fを首席で卒業。全日本F3、スーパーフォーミュラ、スーパーGTへとステップアップを果たし、昨年スーパーフォーミュラでチャンピオンに輝く。今年も現在ランキングトップでタイトル2連覇に王手。
Twitter:https://twitter.com/Tomoki_Nojiri

2022スーパーフォーミュラ第7戦&第8戦もてぎ 野尻智紀(TEAM MUGEN)
2022スーパーフォーミュラ第7戦&第8戦もてぎ 野尻智紀(TEAM MUGEN)

2022スーパーフォーミュラ第7戦&第8戦もてぎ 野尻智紀(TEAM MUGEN)
2022スーパーフォーミュラ第7戦&第8戦もてぎ 野尻智紀(TEAM MUGEN)

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