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投稿日: 2022.10.20 07:10
更新日: 2022.10.19 23:30

父ヨスの厳しい教育とマックス自身の貪欲さ。新時代のF1王者フェルスタッペンを生んだキャリア育成回顧集


F1 | 父ヨスの厳しい教育とマックス自身の貪欲さ。新時代のF1王者フェルスタッペンを生んだキャリア育成回顧集

 攻める時も守りに徹する時も、フェルスタッペンはF1マシンをあたかもレーシングカートのように操ってライバルを打ちのめし、ファンを魅了する。「とてもあんなことはできない」と、あきらめ顔で認めざるを得ないドライバーすらいる。だがヨスは言う。「マックスは単に、何年も身につけてきたことを実行しているだけだ。常識の枠をいったん外して、他のドライバーがやらないようなことをする。敵を観察して弱点を見つけ、正しくそこを攻めるんだ」

 才能と積み重ねてきたトレーニングに加えて、彼には道義と誠実さがある、そう評価するのはレッドブルのチーム代表、クリスチャン・ホーナーだ。

「あれほどストレートなドライバーはなかなかいないね。彼はすべてをテーブルに並べ、なんでもオープンにして、真摯に取り組む。勝つことを心の底から強く望んでいるからだ。グランプリドライバーでも、あんな男はそうそういない。きわめて意欲的で、誰の声も真摯に受け止める。F1のトップスターとして栄光や魅惑を楽しむドライバーが多いなかで、彼はむしろ家で過ごす時間を選ぶタイプなんだ」

 F1のトップアクターであるマックス・フェルスタッペンからは、彼がハッピーな時も不機嫌な時も、そのままの姿が我々に伝わってくる。これこそ本物の証であり、だからこそファンは魅了されるのだ。

 そして彼は嘘を嫌う。2019年のメキシコGPでイエローフラッグを見落とした時、彼は素直にそれを認めた。もちろん、しばし動揺はしたものの、すぐに肩をすくめていつもの彼に戻っていた。

激しいバトルが繰り広げられた2021年のルイス・ハミルトンとのタイトル争い。イタリアGPでは両者一歩も譲らずシケインに飛び込む接触事故が発生。
激しいバトルが繰り広げられた2021年のルイス・ハミルトンとのタイトル争い。イタリアGPでは両者一歩も譲らずシケインに飛び込む接触事故が発生。

「起きたことを変えられないなら、そこから学び、前に進むしかない」これが彼の信条であり、ワールドチャンピオン争奪戦においても重要な意味を持っている。2021年のルイス・ハミルトンとの戦いでは、両者はたびたびコース上で交錯する、激しいせめぎ合いを見せていた。ただ、ライバルにつてはこう語っている。

「ルイスとのライバル関係については多くのことが語られたが、僕自身は彼とは何も問題はない。どちらかというとチーム同士のライバル関係の方が、僕とハミルトンの関係よりもよっぽどシビアだったよね?」

 では、今年のシャルル・ルクレールを相手にした戦いではどうか。ここで思い出すのは、若き日のフェルスタッペンとルクレールがレーシングカートで戦った12年の動画だ。ふたりが競り合い、どちらも危険走行で失格となった一戦だが、そのなかでフェルスタッペンは激しい怒りを露わにしていた。

「僕はリードしていたんだ。彼は抜こうとして僕を押した。僕も押し返して、また彼が押してきて、僕はコースから押し出された。あれはフェアじゃない!」

 これに対し、ルクレールはこう語っている。「マックスと何があったかって? 何もないよ。ただのレーシングインシデントさ」

 カートを卒業し、それぞれにフォーミュラへの道を歩んだふたりのキャリアは分岐したが、2022年の今年、F1でワールドチャンピオンを争う立場になった。フェルスタッペンは言う。「僕たちふたりは互いに相手を尊重している」と。かつて激しくぶつかり合ったふたりは、息を飲むような一線を越えるか越えないかのギリギリのバトルを繰り広げた。フェルスタッペンが“学び、前に”進んできたことの表れと言えるだろう。

 ホーナーは言う。「今シーズン、シャルルとマックスの間には多くのバトルがあった。見てのとおりハードなバトルだが、最後の一線でフェアな戦いにとどまっている。私から見ればこれは、ふたりが相手を尊重しているという最大の印だね。そして今後10年、F1で新しい世代のドライバーが世界タイトルを争う時の参考になるだろうとすら思っている。そう考えれば、F1の将来は明るいと思わないかい?」

 若き王者はいまだ25歳。成長曲線は今なお、強く上昇を続けている。

ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ2022年、シャルル・ルクレールとはフェアな戦いで、一段の成長を見せた。
ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ2022年、シャルル・ルクレールとはフェアな戦いで、一段の成長を見せた。

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 F1速報臨時増刊『2022フェルスタッペン、ワールドチャンピオン獲得記念号』では、今回の談話以外にも、本人の世界王者決定時の記者会見をノーカットで掲載。レッドブル・レーシング代表のクリスチャン・ホーナーの記者会見コメントをはじめ、同モータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコ、HRC社長の渡辺康治、四輪開発部長の浅木泰昭の独占インタビューを特集している。

 そして、マックス・フェルスタッペンの4輪レースキャリア総覧、日本GPの対シャルル・ルクレールとのバトルデータなども企画し、感動のフィナーレとなった今年の日本GPの魅力を余すところなくお伝えする。

『2022フェルスタッペン、ワールドチャンピオン獲得記念号』は10月20日(木)に緊急発売。全国書店やインターネット通販サイトにてお買い求めください。内容の詳細は三栄オンラインサイト(https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=12541)まで。

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