更新日: 2022.10.19 23:10
【中野信治のF1分析/第18戦日本GP前編】鈴鹿でナーバスに見えたレッドブル。デ・フリースの加入と角田裕毅の関係性
少なくとも今週は裕毅の週末だと思っていたので、『このタイミングか!』とは思いましたけど(苦笑)、おそらくアルピーヌ側が早く発表をしたかったのでしょうね。それを抑えきれない感じで同時発表ということになったという印象でした。アルファタウリとしては日本GPでの発表は、できれば避けたかっただろうなと思います。
ガスリーの移籍とデ・フリースのレギュラーデビューはF1界のことを考えると面白いなと思います。オコンとガスリーという結構仲の悪いふたりが同じチームで走ることが凶と出るか吉と出るか。ガスリーがアルピーヌに来ればオコンはもっと頑張るでしょうし、そういった意味でいい方向に行けば相乗効果でアルピーヌは伸びる可能性もありますが、ギスギスしてしまうと一気にネガティブな方向へ行ってしまいます。
来季のアルピーヌはチームとドライバーがオールフランスという体制になります。自分のプロスト・グランプリ(1997年)での経験上、普通に考えるとうまくいかない気もしますが(苦笑)、その部分をどうやって舵取りするかというのはチーム代表のオットマー・サフナウアー次第です。
アルファタウリに関しては、デ・フリースの鈴鹿での会見も僕も聞きに行きました。デ・フリースはもっと若いかと思いましたけど、ガスリーと同じくらいなんですね(ガスリー26歳。デ・フリース27歳)。裕毅とは年齢が離れているのでいいかなという気はしますし、逆に裕毅と同じくらいの年齢だとやりづらいかと思います。
ただ、デ・フリースの会見でのコメントを聞いているとかなりしっかりしていて、めちゃくちゃ頭も良いドライバーであることを感じました。そして、アルファタウリもチームのリーダーシップをデ・フリースに任せるような雰囲気があることも感じました。それはアルファタウリというよりも、おそらくヘルムート・マルコ(レッドブルのモータースポーツコンサルタント)がそんな感じの言葉も投げているのかなということを匂わせるコメントもありました。
もともとフェルスタッペンが同じオランダ人のデ・フリースをマルコに紹介した経緯もあり、レッドブル陣営内としてもデ・フリースは戦いやすい環境が揃っているかと思います。デ・フリースは裕毅と仲もいいらしいので、その部分は心配いらないでしょうけど、かなり手強い相手になると思います。
デ・フリースはかなり負けん気も強そうですし、もう『自分は自分』というタイプのドライバーなので、今までのガスリーと裕毅の兄弟みたいな感じとは違う形になるのかなと思います。
今の裕毅はガスリーとの関係性である意味のガス抜きができていた部分もあると思うので、デ・フリースとは今は仲が良くても、シーズンが始まったら結構バチバチのライバルになる可能性もあります。いい方向に行けばライバル意識丸出しでお互いを高め合うことができるでしょうし、僕としてはそのなかで裕毅は勝ち抜いてほしいと思っています。そこで勝って初めて、本物のF1ドライバーになっていくのかなと思っています。
そういった意味で、デ・フリースと裕毅はすごく面白いコンビになるなと思います。裕毅にとって本当の意味での戦いはここから始まる感じがします。
裕毅はもう3年目でもあるので、1年目のデ・フリースに対してアドバンテージはある。そのアドバンテージをさらに大きくしていくためには、裕毅はもうひとつギヤを上げていかないといけません。そういった意味でも、さらに裕毅が成長できるかどうかということも掛かっているので、裕毅とデ・フリースは結構面白い組み合わせだなと思います。
後編につづく
<<プロフィール>>
中野信治(なかのしんじ)
1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
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