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投稿日: 2022.12.30 00:11
更新日: 2022.12.30 00:33

【中野信治のF1分析/2022最終回】大きく飛躍した角田裕毅と岩佐歩夢。高まる期待と勝負の2023年


F1 | 【中野信治のF1分析/2022最終回】大きく飛躍した角田裕毅と岩佐歩夢。高まる期待と勝負の2023年

 そして2年目のシーズンを終えた角田裕毅(アルファタウリ)については、トータルで見るとレースウイーク時間の使い方が本当に向上したと思いますし、デビューイヤーの2021年に比べるとミスも大きく減りました。しかもフリー走行からチームメイトのピエール・ガスリーを上回る場面がすごく多く、予選でもレースでも前を走るシーンを多く見せてくれました。レースでの戦い方に関してもラスト2戦に関してはうまくタイヤのマネジメントをしながら、確実な走りを見せてくれました。

 裕毅本人もインタビューで言っていましたけど、やはりチームメイトと互角な位置で戦えるところまで来たということは本当の大きな成長だと思いますし、ガスリーは倒すには相当手強い相手だと思うので、本当の意味での成長を見せてくれたと思います。F1にステップアップしてから、かなり厳しい時間を過ごしていたときもあったかと思いますけど、いろいろなことを受け入れ、自分が変化する努力もしてきたと思うので、それが形になった2シーズン目でした。ただ、2023年はニック・デ・フリースが新チームメイトになるので、裕毅はまた新たな戦いが始まります。ですが、そこに向けても十分な準備ができたのかなと思いました。

 アルファタウリのクルマももう少しパフォーマンスが上がれば……というレースも2022年シーズンにはいくつか見られました。そこはレースの世界なので、クルマがいいときに自分をアピールしなければなりません。2021年は1年目ということでアピールする力はありませんでしたけど、2023年は3シーズン目のF1になるので、チームがうまいかたちでクルマの開発を進めてくれれば、間違いなく上位争いに絡んでくると思います。それだけの実力は本当に自分自身の力で身に付けています。

2022年F1 アルファタウリ 角田裕毅
F1シーズン2年目を終えた角田裕毅。ドライバーズランキングは17位ながら、チームメイトを上回る走りを多く見せた

 そしてもうひとり、2022年のFIA F2に参戦してランキング5位になった岩佐歩夢についてですが、本人もF2初年度でここまで戦えるとは思っていなかったはずです。歩夢は持ち前の物事をいい方向に持っていくための探究心と自分自身をどんどんと追い込んで改善するタイプですが、さらに周りも動かしていくというスタイルがあります。それが今年のダムスというチームにピタッとはまったのだと思います。

 今のダムスは良くなってきたということを多くの人が言っていますけど、その“良いダムス”を作っているのは歩夢自身です。それができるドライバーが本当の意味で一流ですし、F1でも活躍することができます。歩夢は今、それを確実に身につけ始めています。僕も10月にフランスのダムスの工場に行き、エンジニアたちとも2022年の歩夢の戦いぶりと、どういうレースをしてどういうミスをして、足りない部分や良いポイントをすべて話してきました。

 そこで感じたことは、歩夢は本当にチームの中で信頼を得ているということです。ダムスの全員が『歩夢を良くしてあげたい』と思っていて、歩夢の良い部分と足りない部分はチームでなんとかしようとしていて、チームが本当の意味でひとつになっています。ヨーロッパのチームをここまでひとつにしてしまう日本人ドライバーは近年いなかったと思います。それこそイギリスF3時代にカーリン・モータースポーツに所属していた佐藤琢磨くらいだと思います。

 歩夢に携わっているエンジニアやトラックエンジニア全員の話を聞いていて『これはすごいドライバーだな』と思ってF2の最終戦を見たら、歩夢はポール・トゥ・ウインという素晴らしい走りを披露してくれました。画面やスクールで歩夢の走りを見て『うまいな』ということだけではなく、実際にどう感じているか、何をしたいと思っているかということをチームはすべて見ています。

 2023年の歩夢には、とにかく結果をきちんと残して次のステップにつなげてほしいです。僕はもともと歩夢の走りについてはまったく心配していなくて、今のレベルには到達するだろうと感じていました。ですが、チームをまとめる、作り上げるという部分は正直、もう少し時間がかかると思っていたので、今の歩夢のチームをひとつにするための努力は本当に素晴らしいと感じました。2023年に向けて本当に楽しみな存在です。

初のポール・トゥ・ウインでシーズン2勝目を飾った岩佐歩夢(ダムス)
2022年の最終ラウンドで初のポール・トゥ・ウイン。シーズン2勝目を飾った岩佐歩夢(ダムス)

<<プロフィール>>
中野信治(なかのしんじ)

1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24

中野信治さんとサッシャさん
DAZNでF1中継の解説を担当している中野信治さんと、実況のサッシャさん


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