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投稿日: 2023.01.30 17:34
更新日: 2023.01.30 20:45

通算最多ポール&勝利記録のハミルトンが歴史的初停滞。揺らぐ“ポールの概念”/2022年F1数字考第2回


F1 | 通算最多ポール&勝利記録のハミルトンが歴史的初停滞。揺らぐ“ポールの概念”/2022年F1数字考第2回

 ハミルトンの15年連続毎年1勝以上のうち、1勝のみだったのは2013年だけ。マクラーレンを出てメルセデスに移籍した初年度で、7月末のハンガリーGPでシーズンただひとつとなる勝ち星をあげている。ただ、19戦中の10戦目には勝っていたわけで、その前に僚友ニコ・ロズベルグが2勝していたこともあり、それほどのピンチ感はなかった。

 2013年以上に危なかったのは2009年だろう。ブラウンGPが前半戦を圧倒した年で、出遅れたマクラーレンにはシーズン0勝かも? という懸念があった。結果的にハミルトンは2勝しているので、のちのちの視点で見るとピンチ感は薄いものの、2013年より危なかったように思える。

 ちなみに2009年も1勝目は7月末のハンガリーGPだった(17戦中の10戦目)。全敗の可能性が肥大化するかもしれなかった可能性を2度までも消した舞台であるハンガロリンク、ハミルトン得意中の得意コースといって間違いないだろう。

 なお、昨シーズン限りで引退したベッテルも、ハミルトンと同じ2007年デビュー(ベッテルは開幕戦からの出場ではなかったが)。同じ年にデビューしたふたりが勝利数の歴代1位と3位というのは、強烈過ぎる現実だ。

 2007〜2021年の15シーズン、全289戦においてハミルトンとベッテルのいずれかひとりは少なくとも決勝に出走しており、156戦でどちらかが勝った。コンビによる期間勝率は54%である(2022年も統計に含めると311戦156勝で勝率.502)。

 ハミルトンとベッテル。一度は同じチームで走る姿も見てみたかった。

メルセデスとフェラーリ時代にはライバルとしてチャンピオンを争ったルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテル
メルセデスとフェラーリ時代にはライバルとしてチャンピオンを争ったルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテル
2007年F1アメリカGPでBMWザウバーからレースデビューを果たしたセバスチャン・ベッテル。結果は8位入賞
2007年F1アメリカGPでBMWザウバーからレースデビューを果たしたセバスチャン・ベッテル。結果は8位入賞

 少し話がブッ飛んでいき過ぎたので、このあたりで軌道修正しよう。通算ポール数のトップ10を眺めてみると、その顔ぶれが勝利数とは微妙に違うところにいろんな読みや解釈ができておもしろい。

 ただ、こちらもトップはハミルトンであり、2位がシューマッハーというのも同じ、そしてベッテル、セナ、プロストが3〜5位(5位タイを含む)にいることは共通している。大昔とのレース数の違いを考慮する必要はあるにしても、この5人、記録面では究極の5傑といえそうだ。また、ジム・クラーク(1963&1965年王者)がポール数で今も歴代5位タイにいることは流石としかいいようがない。

 2022年のフェルスタッペンはポール数に関してはウナギ登り、とはいえなかった。シャルル・ルクレール(フェラーリ)が9回のポール獲得で昨季の最多、フェルスタッペンは7回である。日本GP前の時点では9対4だったくらいで、フェラーリとレッドブルのマシン特性の違いのようなものも感じられるところだ。

 それにしても昨季のフェラーリF1-75、タイトルを獲れなかったのはともかくとしても、レッドブルRB18に対して勝利数4対17で惨敗するほどの差があるマシンではなかったと思うが……(敗因は語るべくもない?)。

2022年のF1でシーズン中9回の最多ポールポジションを獲得したシャルル・ルクレール(フェラーリ)
2022年のF1でシーズン中9回の最多ポールポジションを獲得したシャルル・ルクレール(フェラーリ)

 ところで最近、ポールポジションというものの概念が揺らいでいるような気がする。そのせいで、シーズン別や通算の獲得回数にも「諸説あります」(異説等存在する場合もある)の状態が生じつつあるのが実情だ。

 ポールポジションとは、もちろん“1番グリッド”という場所を示す言葉である。ただ、私見ではあるが、予選1位、予選の勝者、という意味合いも含まれている(いた)と思うのだ。

 エンジン/パワーユニット(PU)交換等に伴うグリッドダウンというルールが悪影響をもたらしている。予選1位になった者が最初からポールポジション(1番グリッド)に就く権利を有していないことがあり、さらにはそういった場合に途中で意図的に予選をやめるケース等もあったりするから事態は深刻だ。

 そして2021年に始まったスプリント予選(2022年からはスプリント)の存在も、この問題のややこしさに拍車をかけている(記録上のポールポジションの概念は2022年に変更され、原則的にノックアウト予選の1位、つまりスプリントのポールポジションが該当、ということになったが)。

 そんな昨今ゆえ、誰もがシンプルに予選最速を目指していた時代のアイルトン・セナ65回、現在は歴代3位に過ぎない数字が光り輝き続けているのだろう。

 少々記憶がアヤフヤだが、F1の予選がおかしくなり始めたのは21世紀初頭、シングルカークオリファイ採用期からであったと思う。決勝スタート燃料を積んで予選を走る、という状況が生まれ(ノックアウト予選移行後もレース中の給油が禁止されるまでしばらく残ったはず)、ポールポジションは単なる一里塚となり始めてしまった。そこにグリッドダウン規定やスプリントが続々と追い打ちをかけ……。

 もちろん、最も価値ある勝利は決勝レースでのそれだ。でも、崇高にして気高い1ラップ最速の美学もF1には必要だった。でも、それはもはや崩壊したのである。

 セナを超えたふたり、シューマッハーの時代のうちに予選が(上記したように)おかしくなり始め、ハミルトンの時代になると、もうセナの65回と純粋に何かを比較することは不可能になっていた。ハミルトンがセナの65回に並んだとき(2017年カナダGP)、セナのヘルメットを贈られた際の彼の喜びようが感動的だっただけに、現代の“ポール事情”がなおさら残念に思われてならない。

 ……と、しみじみしていても仕方ない。さあ、今季2023年は通算勝利数と通算ポール数、ともに『103』で止まっていた頂点の数字が再び動き出すのだろうか、大いに注目したい。“2冠王”ハミルトンとしては数字を大きく動かし、通算記録面のライジングスターであるフェルスタッペンとの差を(特に勝利数に関して)少しでも広げておきたいところだ(ハミルトン本人はあまり意識していないかもしれないけれど)。

2021年F1サウジアラビアGPで通算103回目のポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1サウジアラビアGPで通算103回目のポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021&2022年F1王者のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2021&2022年F1王者のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)
アイルトン・セナ最後のポール・トゥ・ウインとなった1993年F1オーストラリアGP
アイルトン・セナ最後のポール・トゥ・ウインとなった1993年F1オーストラリアGP
2007年F1カナダGPで初のポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)
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2019年F1日本GPでキャリア最後のポールポジションを獲得したセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
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