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投稿日: 2023.02.19 18:15
更新日: 2023.02.20 00:17

F1新規定導入でマシンは遅くなった!? ラップタイムから後退度合いを探る/2022年F1数字考第3回


F1 | F1新規定導入でマシンは遅くなった!? ラップタイムから後退度合いを探る/2022年F1数字考第3回

 さて、2022年のマシンがラップタイム的に遅くなった理由を考えると、やはり車重の増加が最大の理由ではないか。タイヤ/ホイールサイズの変更も影響しているだろう。車重に関していえば、2022年はドライバー込み、燃料レスの状態での最低重量が798kg。2021年より約6%もマシンが重くなっていたのだから、一発の速さが少し遅くなるのは当然ともいえよう。これくらいで済んでいるのは立派?(他の要素を完全に無視した話だが)

 ここで、次のような疑問を感じる方もいるだろう。

「F1のマシン規定はほぼ毎年なんらかの変化があると思うが、2021年のマシンは大きなくくりでいう“2017年規定”の最終版であるはず。新規定初年度の2022年マシンにとって、あまりに不利な比較相手では?」

 確かに。それでは、ハンガリー、イタリア、アメリカ、メキシコの4グランプリに関して、2016年から予選Q3最速タイムの変遷を見てみよう。

■2016〜2022年における予選Q3の1位タイム推移

GP 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
ハンガリー 1分19秒965 1分16秒276 ウエット 1分14秒572 1分13秒447 1分15秒419 1分17秒377
イタリア 1分21秒135 ウエット 1分19秒119 1分19秒307 1分18秒887 1分19秒555 1分20秒161
アメリカ 1分34秒999 1分33秒108 1分32秒237 1分32秒029 開催なし 1分32秒910 1分34秒356
メキシコ 1分18秒704 1分16秒488 1分14秒759 1分14秒758 開催なし 1分15秒875 1分17秒775

 シルバーストン(イギリス)、バルセロナ(スペイン)といったところを入れたかったが、シルバーストンは肝心の2022年の予選Q3が雨、バルセロナは2021年からコース全長が変わっており、採用を断念した。

 低速寄りの印象が根強いハンガリー、高速系の代名詞であるイタリア、今回の統計では中間的と思われるアメリカ、標高が高いという個性をもつメキシコ、この4つの流れを見ると、ザックリしたくくりの2017年規定時代(2017〜2021年)には、それほど大きなタイム変動はなかったといえよう(ハンガリーGPはやや乱高下気味だが)。

“2017年規定2年目”の2018年に若干の高速化傾向こそ感じられるが、F1チームの開発力は早い段階で、つまり新規定1年目にして“その規定のマックス”に近い領域に一応の到達を果たしてしまう、ということが言えそうなのである。

 ということで、大きなくくりで見た“2022年規定2年目”の2023年になって急激なまでの状況変化があるということは考えにくい。それこそ2017年は明らかに2016年よりも速くなっていたわけで、2022年が2021年比でそうならなかったということは、当面は概ね2022年のタイム水準が続く可能性が高そうだ(F1の場合、ささいな規定変更がゲームチェンジャーの役割を果たすことも考えられなくはないので、断定はできないが)。

 鈴鹿サーキットの予選コースレコードは1分27秒064。2019年、台風の影響で日曜(決勝日)の実施になった予選のQ3でセバスチャン・ベッテル(当時フェラーリ)がマークしたタイムである。3年ぶりの開催だった2022年のQ3トップタイムは1分29秒304(マックス・フェルスタッペン/レッドブル)。鈴鹿1分26秒台という次の夢が実現するのは、しばらく先のことになりそうだ。

 昨季を最後にF1から引退したセブ、大好きな鈴鹿のレコードホルダーの座は当分、安泰なようですよ。

 2022年規定導入の主たる目的であったレース中のオーバーテイクの増加、こちらの効果のほどはどうだったか? オーバーテイクについて自主統計で語ることは困難、あくまで個人の感覚的なところで話すのが精一杯だが、大きな状況変化はなかった、ように感じられる。ただ、抜けそうで抜けないまま、といった状況は少し減ったようにも思えた。読者のみなさんはどんな感覚をお持ちだろうか。

 今季2023年のF1も新車発表が続くなどして、開幕近しの雰囲気が強くなってきた。“2022年規定2年目”は、どういう数字の動きが見られるのか、楽しみにしたいものである。

2019年F1日本GP セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
2019年F1日本GP セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
“2022年規定2年目”となる2023年のF1も楽しみだ
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