リヤタイヤ前方のデッキには、2つのL字型の大きなカットアウトがある。これは空気をタイヤの側面に導いて、ディフューザーの方へ向かう気流を形成するもので、昨年まではレギュレーションによりリヤホイール中心線より後ろになければならなかったが、今年はその線から175mm前方まで許容される。
マシン後部では、「シャークフィン」とも呼ばれるエンジンカウルの背びれが復活していることも、注目に値する。
リヤウイングのエンドプレートは、前後長が短く、スラント(後傾)した形状になる。ウイングアッセンブリーが昨年より低くなるため、ボディ上流で発生する乱れた気流の影響を受けやすくなる可能性があり、エンドプレートの働きは一段と重要になるだろう。
その形状は変わっても、低くワイドになったリヤウイングの効率を高めるべく、エンドプレートに様々なスロットが設けられることに変わりはないようだ。昨年、翼端で発生する渦を軽減を目指してトロロッソが先鞭をつけた、前方が開放されたルーバー状のスロットも取り入れられている。
財政的に厳しい状況に陥った1月初めの時点で、マノーは新車の製作が困難になる可能性を見越して、2016年のマシンに必要な改造を施した暫定仕様の「MRT05B」でシーズンを迎える準備を始めていた。
これは2017年のレギュレーションに合わせて、フロントノーズ下面とウイングピラー、シャシー下面のスプリッターとプランクの取り付け、バージボード、サイドポッド上面のカバー、フロアとリヤウイング、ディフューザーなどを作り直したものだったと言われている。
マノーが計画していた新車は、注目すべきディテールが満載されたマシンではなかったかもしれない。だが、その風洞モデルの写真は、2017年の空力開発がどれほど複雑で高度なものになりうるかを示している。